『“人生の時間をどう使いたいか” 自分の軸をぶらさずに歩んでいく』<br>バークレイズ証券 ヴァイス・プレジデント 吉田 恵美子さん【後編】のイメージ画像

マイキャリアストーリー

『“人生の時間をどう使いたいか” 自分の軸をぶらさずに歩んでいく』
バークレイズ証券 ヴァイス・プレジデント 吉田 恵美子さん【後編】

誰しも迷うキャリアの決断。管理職として活躍する女性はいつ、何に悩み、どう決断してきたのか。キャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。

今回は前回に引き続き、バークレイズ証券 投資銀行部門 債券資本市場部でヴァイス・プレジデントを務める吉田恵美子さんにお話を伺いました。

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吉田 恵美子(よしだ えみこ)さん

バークレイズ証券株式会社 投資銀行部門 債券資本市場部 ストラクチャード・ファイナンス担当 ヴァイス・プレジデント
2019年6月、バークレイズ証券株式会社投資銀行部門にアシスタント・ヴァイス・プレジデントとして入社。2021年、ヴァイス・プレジデントに昇進。債券資本市場部でストラクチャード・ファイナンス(証券化)商品の組成に関わる一連のアレンジメント全てを担当している。

プロジェクト規模の大きさに惹かれ、バークレイズ証券に入社

ニューヨークに移り、未経験から飛び込んだ金融業界。「同じ資本主義経済の中を生きていても、同じ投資商品に対するお客様の反応が千差万別である」と痛感すると同時に、その難しさと面白さに、どんどんのめり込んでいきました。
ニューヨーク在住中の結婚を経て、2015年からは夫の仕事に帯同する形で1年半ほどスリランカに居住。その後、大学卒業後からの長い海外生活を終え、2017年に夫婦で東京に帰国しました。
「スリランカでは仕事を辞めて専業主婦をしていました。だからこそ、自分にとって仕事の喜びとは何かを改めて考えることができたのでしょう。帰国後、やっぱりもう一度金融業界に戻りたいと、みずほ証券の投資銀行部門プロダクツ本部に入社し、2019年にバークレイズ証券に転職しました」
バークレイズ証券に入社を決めたのは、関わる案件の資金調達規模が大きく、金融の仕組みを通じて多様な企業やプロジェクトをサポートできる、そのスケール感に惹かれたからでした。
「実際にグローバルでプロジェクトを動かす際は、アジアをはじめ、ロンドン、ニューヨークのディールチームと日々コミュニケーションを密にとり、どんな提案が投資家や借り手となるお客様に響くのか、喜ばれるのかを真剣に協議していきます。投資家や借り手がどの国にいるかで、適用すべき法律が変わってくるので、各国の法制度や市場慣行の違いを常に意識しながら魅力的な提案・投資商品を組み立てていかなければなりません。グローバルの様々な拠点の人たちと対話を重ねていると、『そんな視点もあったのか!』と驚かされることばかり。まだまだ足りない知識があると実感し、日々学ばせてもらっています」
投資商品の組成に関わるステークホルダー(関係者)は、社内外多岐にわたります。
向いている方向がバラバラなところからスタートし、誰に何をしてほしいのか、関係者全員との対話を重ねていきます。どの関係者とどのようなコミュニケーションを取ったのかを全員と常に共有する、丁寧なコミュニケーションが、案件をスムーズに進める一番の近道だと話します。
「さらに案件の責任者としては、投資家の皆さんに対して、『投資へのリターンがきちんと生み出される商品であるか』、『リスクを低減する仕組みをどう構築しているか』などを、納得いただけるように伝え切れるかが重要になります。
投資タイミングも非常に大事なので、投資商品をいつまでに仕上げるか、スケジュールの段取り力も欠かせません。乗り越えるべきハードルがたくさんあるからこそ、案件を無事クロージングさせられたときの達成感は、何物にも代えられない喜びです。『次もこんな気持ちを味わいたい!』という思いが原動力になり、今の仕事をずっと好きで続けているのだと思います」

目の前の仕事を通して“生きる力” を身に着けていく

好きな仕事を続けられるのは当たり前のことじゃない、と話す吉田さん。金融業界のキャリアをスタートしたニューヨークではリストラも経験したそう。しかしその経験が、仕事への向き合い方を変えてくれたといいます。
「ニューヨークでは、金融の仕事を始められた!と思っていた矢先に、自分がリストラの対象になりました。当時は米国経済も(リーマン・ショックからの)回復途上で、リストラが珍しいことではなかったんです。悔しい気持ちもありましたが、私は『これは、これからもいつでも起こりうることだ』と受け止めました。どの業界でどんな仕事をしていても、実力で生き延びていかなければならない。グローバルで働くとはこういうことだと身を持って体験したんです。

何が起こっても生きていけるように、目の前の仕事を通じて、他の業界や会社でも通用するスキル・知識を身に着けていかなければならない。そう常に意識しながら働くようになりました。
例えば、関係者に送るメール一つをとっても、私が考えていることが100%正確に伝わるような文面になっているか。誤解なく、受け取った相手がすぐに業務に反映させられるような具体的な内容になっているかを、徹底してチェックするようにしています。業務を積み重ねて自分の糧にしていくこと。これは、海外での経験が私に教えてくれたことです」
2021年には子どもを出産し、「人生の景色がまったく変わった」と話します。「コミュニケーションの取れない存在が一人加わる」ことの大変さに夫婦ともに四苦八苦しながら、お互いの仕事を尊重し合うことで乗り越えてきました。
「夫婦ともに金融関係の仕事をしているので、お互いに背負っている責任、最低限守らなくてはいけないクオリティについて理解があります。『私のほうが大変』だとか『相手の仕事よりも私のほうが大事』などと比較してしまうと、どちらかに負担が寄っていってしまう。子育てと仕事との両立は、身近なパートナーと協力し合えることが一番大事なのかなと思っています」
バークレイズ証券には、手厚いベビーシッター費用補助制度があり、必要に応じて利用できるそう。職場復帰したての頃は、子どもの急な体調不良で「何度使ったかわからない」と振り返ります。
「休まざるを得ないことは圧倒的に増えましたが、その分、前もって仕事の状況を周りと共有することを心がけるようになりましたね」

この仕事が好きだから、続けるために変化を受け入れていく

これまで、住む場所を大きく変えながら転職を経験してきた吉田さん。「勇気もいるし、体力もいる」という転職ですが、自分にとって最適なワークライフバランスは何かを考える貴重な機会になったと話します。
「長いキャリアの中では、仕事を辞めて夫について行った時期もありましたし、子育てとの両立に悩んだ時期もありました。いろいろな景色を見た上で、『私は今の仕事をしていきたい』 『プライドを持って働き続けたい』ということが明確になっています。

何にどれくらい時間を割きたいか、価値観は人それぞれです。仕事を大事にしたい、と考えるならば、私の場合は周りのサポートが不可欠なので、お金を払ってサービスを提供してもらうことも許容しながら決断していく必要がありました。そこは、人生で大切にしたい時間の使い方を軸に、柔軟に変化させていくべきところだと考えています。

どんなことに時間を使いたいのか、何を大事に人生を歩んでいきたいのか、その軸をぶらさずに持ち続けることで、自分にとって精神的にも身体的にも一番バランスが取れた状態を作れるのではないかと思っています」

「前編記事」





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写真:MIKAGE
取材・執筆:田中 瑠子

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