『「選んだのは自分」と納得できる意思決定が大切』
住友生命保険 国際業務部 奥村三沙子さん【後編】
誰しも迷うキャリアの決断。管理職として働く女性はいつ、何に悩み、どう決断してきたのか。キャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。
今回は、前回に引き続き、住友生命保険相互会社で国際業務部タスクフォースマネージャーを務める奥村 三沙子さんにお話を伺いました。
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奥村 三沙子(おくむら みさこ)さん
住友生命保険相互会社
国際業務部 タスクフォースマネージャー
大学卒業後、1999年に住友生命保険相互会社に新卒入社。
入社後は一貫して資産運用部門でキャリアを重ね、2017年に総合キャリア職へ職種変更、2018年にALM証券運用部資金債券運用室担当室長に就任。2022年には国際業務部国際業務室担当室長に就任し、2023年から現職。
1年間の産休・育休を経て復職、自分のリミットを把握できるようになった
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- 一般職から総合キャリア職への職種変更には、論文の提出や社内の試験に合格すること、ファイナンシャルプランナーの資格を有していることなどが条件でした。入社以来、「毎年必ず一つは資格を取得する」という目標を課し、継続していた奥村さん。職種変更を決めたときには、応募条件をすでに満たしていたといいます。
- 「総合キャリア職への挑戦に、以前から興味は持っていました。ただ、大好きだった資産運用の仕事から異動で離れなければいけないかもしれないと思うと踏ん切りがつかなかった。そこで、いざやりたいと心が固まったときに、すぐに動けるような準備だけはしておこうと、資格勉強も進めていたんです。自己研鑽を習慣化していたことが、ここぞというときに役立ちましたね」
- 職種変更後は、妊娠・出産を経験し、産休・育休を約1年半取得。2020年の復帰後はコロナ禍が重なったことから、在宅勤務でも資金決済できるような仕組みの構築を進めていきました。
- 「以前は、決済業務は全員出社がマストでした。というのも、高額の資金決済にはセキュリティの高い専用端末でなければ操作ができないからです。それ自体は今も変わりませんが、業務領域を細分化していくことで、出社する人数を最小限に抑え、在宅勤務が可能な体制を作ることができました」
- 業務の整理と細分化は、奥村さん個人の働き方においても取り入れていったそう。自分の時間をすべて仕事に使えた出産前の働き方から一変し、家族との生活の上に仕事があるライフスタイルへ。限られた時間の中でいかに優先順位をつけてスケジューリングしていくか、その重要性に気付いたと話します。
- 「どこまでは一人でできて、どこからは周りの力を借りなければできないか。常に仕事の取捨選択をしながら、自分のリミットをきちんと把握しておくことの大切さを学んでいきました。管理職としてメンバーを持っていたので、抱えすぎて仕事が滞ってしまえば、メンバーに迷惑がかかってしまう。この仕事はこの人に任せて、自分がやるべき業務のスペースを空けておこう、と動けるようになりました」
初めての部署異動、「頼られているのだから」と気負っていた
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- 2022年から任されている国際業務部でのマネージャーの仕事は、22年間、資産運用に携わってきた奥村さんにとって、まったく新しい業務内容でした。初めての部署異動で、海外事業について右も左もわからない。誰に何を聞けばいいのかの見当もつかず、異動後は「キャリアの中で一番きつい時期だった」と振り返ります。
- 「今思えば、もっとメンバーに聞いて、教えてもらえばよかったんです。でもマネージャーポジションで着任したのだから、メンバーは私に判断を求めているはずだと勝手に気負ってしまっていて…。スピードを持って判断しないといけないのに、インプットが追いつかず、最初の1年は本当にいっぱいいっぱいでした」
- そんなときに支えになったのは、そっとフォローしてくれる国際業務部のメンバーはもちろんのこと、かつて一緒に働いていた資産運用部門のメンバーでした。部署を離れても助けてくれたり、声をかけてくれたり。「住友生命っていい会社だな」と実感することで、大変さを乗り越えられたと話します。
- 「それまでは、長く知っている環境や業務領域で力を発揮していけばよかったけれど、総合キャリア職になれば、3~5年で担当領域はどんどん変わっていく。新しい環境でも、ぱっと力を発揮していく難しさを知れたことは、これからのキャリアの糧になるはずです。
また、2023年度に参加した人事部門主導の女性職員向け研修『ウーマンズ・ブリリアント・リーダーズ・プロジェクト』を通して、社内のさまざまな部署で活躍する女性職員と接点を持てたことは、とても貴重な経験になりました。今まで携わってきた仕事は全社の中では一つの部署にすぎず、会社への貢献の仕方にはいろんな方法があるんだな、と改めて実感しましたね。今のポジションにいなければ参加できなかった研修であり、職種変更に挑戦したからこそ高まった視座だと感じています」
- 仕事に慣れてきた今は、メンバーと議論しながら全員参加型で意思決定を進めていくなど、奥村さんらしいマネジメントの在り方を模索できるようになったといいます。
- 「私自身、住友生命で成長を感じられる働き方をさせてもらってきたように、メンバーにも、仕事の時間にわくわくできて、心身が健康でWell-Beingな状態を提供していきたい。一人ひとり大事にしたい考え方は違うので、かつて私の強みを見出してくれた上司のように、常にメンバーと向き合いながら寄り添っていきたいですね」
- 続けて、今は生き方や働き方の選択肢が多いからこそ苦しいことも多いのではないか、と話す奥村さん。だからこそ、「選んだのは自分だ」と納得できるように、考え抜く姿勢が大切だと考えています。
- 「何かを選択したあとに、『もっとこうしておけばよかった』と思うことは誰にでもあると思います。でも、当時の自分はそれがベストだと思って選択したんだと前を向いて進んでいくには、そのときどきで後悔がないように自分で決めていくことが大事。誰かのせいにすることがないように意思決定ができたら、あとはその道を正解にしていけばいいのだと思っています」
→「前編記事」
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写真:MIKAGE
取材・執筆:田中 瑠子