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マイキャリアストーリー

『家業を継ぐことは、自分にしかできない仕事』
東洋食品・専務取締役 荻久保 瑞穂さん【後編】

誰しも迷うキャリアの決断。先輩たちはいつ、何に悩み、どう決断してきたのか。現役で活躍し続ける女性たちに、これまでのキャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。今回は前回に引き続き、株式会社東洋食品 専務取締役の荻久保瑞穂さんにお話を伺いました。

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荻久保 瑞穂(おぎくぼ みずほ)さん

株式会社東洋食品
専務取締役

キャリアのターニングポイントは「出産と復職」

キャリアのターニングポイントを尋ねると、荻久保さんは「出産と復職だった」と答えます。
「2016年に東洋食品に入社し、翌年に一人目を出産しました。2020年には双子を出産し、今は三児の子育て中です。二回目の出産後は本当に大変で、睡眠時間が一日4時間しか取れない日々が2年間続き、仕事ができる時間も本当に短くなってしまいました。

もともとは、金融業界での仕事柄、何でも自分が納得するまで細かく調べていたのですが、復職後、それでは仕事が追いつかなくなり、自分自身がボトルネックになっているのを感じました。

これではだめだと思い、仕事のやり方を変えました。細かいことにこだわらず、周りを信頼して任せる。すると、みんなが自分で考えて動いてくれるようになりました。
その一方で、私自身は、人に任せるために、「何を任せるのか」を伝えなければなりません。そのために仕事を整理し、無駄な部分を省き、何が重要なのか明確にすることで効率化が進みました」
部下との信頼関係を築くときにも、組織を変えていくときにも、相手の話を聞くことを大事にしている荻久保さん。人に仕事を任せるときにも、聞く姿勢を大切にしているといいます。
「相手の意見を否定せずに聞くこと、良いことも悪いことも隠さず全部話すこと、そして謙虚でいることを心がけています。そうすると、言いにくいことも率直に話してもらえ、課題を深堀りすることができます。そういう声を大事にして、アクションに繋げるようにしています。」

社員に任せたことで、考えて動く組織に変わった

そうして、周囲に仕事を任せるようなった荻久保さん。次第に組織が変わっていく様を実感したといいます。
「会社の方針やそのために必要なこと、そしてそれがあなたにとっても部署にとっても、こんな風にプラスになると伝えて納得してもらうと、みんな積極的に新しいことに取り組んでくれます。

例えば、最近のホームページのリニューアルやISO22000認証の取得は、社員からの発案でスタートしたんです。そして一回の成功体験をきっかけに『次はこういうプロジェクトをやりたい』と、さらに動き出す。ここ数年で、自分たちで考えて動く組織に変わってきて、とても良い雰囲気になってきたと感じています」
今後の展望を伺うと「自分たちの今の強みを活かせる事業を展開していきたい」といいます。そして、学校給食システムを海外に紹介することへの意欲も見せてくれました。
「日本の学校給食は教育の一環なので、配膳から片付けまでを子どもたち自身が行い、みんなで一緒に、同じ時間に同じメニューを食べます。そして『食の教育=食育』は、知育・徳育・体育の基礎に位置付けられています。このように給食を教育の一環と位置付けている国は日本だけなんです。また栄養バランスも良く、低価格で提供されますし、近年では無償化の動きもあります。子どもの頃から給食を通して食育を受けていることが、日本の肥満率の低さや長寿命の根底にあると思っています。

海外にも給食システムを取り入れている国はありますが、食堂形式で好きなものを選んで食べていたり、世帯収入の影響を受けたりしています。また、さまざまな栄養課題を抱えている国は多いので、日本の学校給食のシステムを海外に広めることで、健康課題を抱える国々に貢献していきたいですね。」
仕事と子育てを両立させ、毎日分刻みで業務をこなしているという荻久保さん。両立のために意識していることを質問すると、こんな答えが返ってきました。
「人に頼ること、信頼できる相談相手を作ること、自分を犠牲にしないことが大切ではないでしょうか。私自身もそうでしたが、仕事と家庭を両立していると、どうしても時間が足りず『自分の睡眠時間を削ればいい』『自分が朝食を抜けばいい』と、自分を犠牲にしてやりくりしたくなります。でも、それではやはり疲れますし、メンタルもやられてしまう。仕事への悪影響も出ます。

ですから、自分のメンテナンスも後回しにせず、周りをもっと頼った方がいいと感じるようになりました。私の場合、幸い夫が協力的で、家事も育児も二人で分担しています。無理をせず、子どもたちと向き合う時間を大切にしています」
最後に、管理職を目指す女性に向けて、こんなエールを送ってくれました。
「確かに管理職になると、責任の重さや負担が増えますが、自分の言葉や行動で、部下が変わり、チームが変わり、会社が変わり、社会が変わる。管理職としての仕事をそのように捉えると、仕事が楽しくなると思います」

「前編記事」





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写真:MIKAGE
取材・執筆:北森 悦

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