山口真由さん「共働き夫婦は、お互いのキャリアを諦めない選択肢を話し合おう」
キャリア、仕事、人間関係、健康、家族、恋愛…。悩み多き、現代女性たちに寄り添う新連載がスタート。信州大学社会基盤研究所特任教授で法学者の山口真由さんが、働く女性として、母として、皆さんのお悩みに答えます! 第一回は、「夫の転勤に伴うキャリアの中断」について。家族とキャリア、どう両立していくべき?
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山口真由さん
1983年生まれ。信州大学社会基盤研究所特任教授・法学博士。
東京大学を総長賞を受け卒業。卒業後は財務省に入省。退官後、弁護士として主に企業法務を担当。その後、ハーバード・ロー・スクール(LL.M.)卒業。ニューヨーク州弁護士登録。
東京大学大学院法学政治研究科博士課程修了。
現在「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)「ゴゴスマ」(CBCテレビ)などに出演中。
自分のキャリアを諦めて、夫の海外赴任について行くべき?
≪相談者≫ Tさん(35歳):広告業界勤務。昨年10月に課長職に昇進。部下6人を抱える。小学生と保育園児の2人の子どもを育てながらフルタイム勤務中。
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山口さんの回答「夫婦の仕事は対等で、子育ての責任は半分」
まず、お悩みの内容からもTさんがとても仕事ができる印象が伝わってきます。「実家が遠方である」「リモートワークはできない」など、こちらが回答を考える上で気になる点を想定して事前に伝えてくれている点など。大前提として、働くことに向いていると思います!
専業主婦になる選択と、キャリアを重視する選択にもちろん優劣はなく、向き不向きがあるのだと思います。
キャリアを諦めることに悔しさを感じるTさんは、きっと仕事をやり遂げることが好きなタイプですよね? それならTさんのキャリアは絶対に諦めなくて良い。自分自身で闘う意志と能力がある人は、絶対に社会の中で闘うべきだと思います。子どもが大人になるに従って、働いているお母さんだからこそ見せてあげられる世界って増えていくと思います。
だからこそまずは、お互いの仕事は対等で、子育ての責任は半分という前提に立って、夫婦で話し合うべきだと思います。「あなたが中国に赴任をすることと、私が仕事を続けることは対等な権利。だから、あなたが赴任を断ったり、子ども2人を中国に連れて行ったりする選択肢もあるんだよ」と。夫にもTさんの仕事、子育てを自分ごととして真剣に考えてもらうのです。
もちろん、夫が赴任を断ったり、Tさんだけが日本に残ったりすることは現実的ではないかもしれません。でも、夫婦の間で自分だけが悩みを抱える必要はないのです。もしもここで自分だけが折れてしまうと、将来的に悪い形で残ると思います。例えばそれは、「あなたはいつも自分の仕事を優先して…」という夫に対する遺恨かもしれないし、子どもに自分の上昇志向を押し付けて無理な“お受験戦争”を始めることかもしれません。
どんな選択をするにしても、夫婦でお互いのキャリアと子育てについて対等に話し合っていれば、納得感が持てるのではないでしょうか。
シッターサービス利用の壁の乗り越え方
今回のTさんの場合は、夫が単身赴任をして、Tさんは日本に残り仕事と育児を両立することが最善だと私は思います。それを実現するために、現実的な選択肢を二つ考えました。
一つは、平日だけ遠方の母に育児の手伝いに来てもらうこと。もう一つは、シッターサービスを利用すること。ただ、シッターさんを自宅に招くことには抵抗があるかもしれません。また、シッターさんと子どもの相性もあります。この二点はシッターサービスを利用する上でのハードルだと思います。
私もシッターサービスを利用していますが、ある程度のことは目を瞑っています。とりあえず自分の下着だけ閉まっておいて、台所が多少汚れていても気にしません(笑)。
今は信頼しているシッターさん2人とお付き合いがあります。その方々に出会うまで何人かのシッターさんにお願いしましたし、途中で「合わないかも」と悩んだこともあります。なので、シッターさんに任せることが簡単ではないことは十分わかります。でもそこで止まってしまったら、キャリアを諦めるしか選択肢がなくなってしまうのです。
何人かに預けているうちに自分と合うシッターさんに出会えるし、子どもも慣れてきます。そういった周りの手も利用しながら、子どもを可愛いと思う世界と、仕事に価値を感じる世界の二つの世界を行ったり来たりする人生を諦めないでほしいです。
回答まとめ
・仕事をする意思があるのならば、キャリアを諦めずに社会に出続けよう
・夫婦の悩みを一人で抱え込まない。仕事も育児も対等という前提で話し合いを
・子育てと仕事、二つの世界を行き来するためには、シッターサービスの利用がオススメ
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