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仕事に効く話

部下との関係がみるみる上手くいく言い換え図鑑

2022.12.16

指導や依頼、評価の時……、良かれと思って発した言葉が、実は部下にマイナスな印象を与えていたなんてことも。部下とのコミュニケーションを円滑に進めるために、身に付けておきたいのが、適切な言葉選びです。今回は、『よけいなひと言を好かれるセリフに変える 言い換え図鑑』(サンマーク出版)著者の大野萌子さんに、部下とのコミュニケーションで大切な伝え方と、NGワードの“言い換え”をお聞きしました。


大野萌子さん
日本メンタルアップ支援機構 代表理事、公認心理師、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関など5万人以上に講演・研修を行う。

上司から部下へ気持ちを伝える時の3つの極意

ーーまずはじめに、部下に対する「伝え方」の心得について教えてください。
大野:ポイントは3つ、「①過度な遠慮をしない」「②上下の立場を認識する」「③伝えたい内容と表情、音調を統一する」ことです。

まず「①過度な遠慮をしない」から。過度に相手を気遣おうとすると、どうしても回りくどくなってしまいますが、伝えたいことは「具体的に・率直に伝える」ことが大切です。例えば、「手が空いた時にこの仕事お願いね」と頼むと、部下側はいつまでに終わらせればいいのかわかりません。「●月●日までにお願いね」と伝えてください。ただし、一方的な押し付けにならないよう、フォローも大切。例えば最後に「難しかったら言ってね」という一言などを添えるとグッと印象が良くなりますよ。

続いて「②上下の立場を認識する」。よく、会話はキャッチボールに例えられますが、上司と部下の場合、そのキャッチボールは平面ではなく、高い位置と低い位置で行われていることを理解してください。2階から剛速球で投げた球はキャッチできないですよね? だからこそ、こちらから投げる時には優しく、丁寧に。逆に部下からこちらに投げる時は、かなりエネルギーがかかっているもの。ちょっと弱いボールだなと思っても、身を乗り出して受け止めてあげる気持ちでいてください。

そして「③伝えたい内容と表情、音調を統一する」。表情や声色も、言葉同様に相手に与える影響力がとても大きいものです。だからこそ、自分の意図と一致させることが大切。笑いながら指導すると「大した事がないのかな」と思われますし、逆に真顔で褒めると「嫌味だったのかな」と、思われてしまいますよ。

仕事のトラブル時には、問題箇所を一緒に確認する一言を

ーーでは、その3点を踏まえた上で、仕事を依頼する際のNGワードとその言い換えについて教えてください。
大野:先ほど挙げたように、具体的に率直に伝えなかったあまり、認識のズレが起きることがとても多いです。依頼をする際には「できれば」「早めに」という曖昧なワードはNG。具体的な日時を伝えてください。また、リモートワークやフレックス制度など、働き方が自由になった分、時間に対する認識が個人でより異なるようになりました。「今日中」というのが、17時までなのか、23時59分までなのか、人によって曖昧ですよね? なので、「〇月○日○時までにお願い」と、時間までハッキリと指定するのがベストです。

ーー部下へ指導する時に使いがちなNGワードはありますか?
大野:よくありがちなNGワードは、「こんなこと言いたくないんだけど」「何度言ったらわかってもらえるかな」「常識的には・ふつうは」です。

「こんなこと言いたくないんだけど」は、枕詞として使う方が多いのですが、部下としては言われた瞬間、嫌なことを言われることがわかって、本題に入る前に耳をふさぎたくなってしまいますよね? これは、「気になっているから伝えるね」など、柔らかい言葉に言い換えましょう。

「何度言ったらわかってもらえるかな」が出るほど、部下が何度も同じミスを繰り返すということは、意思疎通が正確にできていないという問題がはらんでいます。どこで問題が起きているのか、すり合わせから始めましょう。「トラブルになっている部分を一緒に確認しよう」「どこか困っていることはない?」など、問題の部分を明確にする一言に言い換えましょう。

最後の「常識的には・ふつうは」ですが、この一言は相手に「非常識ですよ」と言ってしまっている様なもの。伝えたいことを一般論化せずに、「私はこう思う」「うちの会社ではこの方法なんだけど」と、あくまで自分の意見として伝えるのが良いでしょう。

ーー特に、指導の場面で困るのが「仕事ができない」と感じてしまう部下に対して。言いにくいことを伝える時はどうすればいいのでしょうか?
大野:これも、「苦手なことは何?」「困っているところはどこ?」など、まずはどこで問題が起きているのかすり合わせから始めると良いと思います。仕事ができないということは、部下側は質問することすらできない状況、ある種パニックを起こしているので、上司はその問題を払拭してあげることが大切です。また、自信もなくしてしまっている状態なので、長所を具体的に伝え、出来たところを褒めましょう。スモールステップで成長させてあげると、本人も自信を取り戻し、仕事に対して積極的な姿勢を見せてくれますよ。

部下との面談では「オープンクエスチョン」を上手く使おう

ーー最近は、1on1を実施する会社も多いですが、部下との面談の際、伝え方で気を付けるべきことはありますか?
大野クローズドクエスチョンではなく、オープンクエスチョンで聞くことです。クローズドクエスチョンというのは、「はい」「いいえ」で答えられること。これを多用してしまうと、まるで尋問を受けている感覚になってしまいます。一方、オープンクエスチョンは「○○についてどう思う?」「○○をどうやろうと思っている?」と、相手に回答を考えさせる質問です。これがあると、質問が一方通行にならず、相手の気持ちが聞きだせます。

また、質問の受け答えを、ラリーにしないことも大切。テンポよく返すのではなく、相手の回答を一度受け止めてから返すことを意識してください。「なるほど、そう思ったんだね」などの相づちを挟んで、相互交流するようにしましょう。

褒める時も、指導する時も、主語を「私目線」で

ーーでは、褒めているつもりでも、実は印象が良くない言葉はありますか?
大野具体的ではない「いいね」は、適当にあしらわれていると感じる部下が多いです。そうではなく、例えば部下が制作した資料を褒める場合、「レイアウトが良かったよ」「文章が良かったよ」と具体的に褒めること。すると、部下も「褒められた部分は自分の強みだから、次回も頑張ろう」と、どんどん成長する姿勢を見せてくれますよね?

また、褒める時には「意外と・思ったより」という枕詞はNG。「元々期待していなかったのかな」と思われてしまいます。「あなたに任せて良かった」「上手く行って私も嬉しい」など、自分の気持ちを伝えることで、本心から出ている言葉だと伝わりますよ。

ーー普段使いがちだけど、実はハラスメントに繋がる言葉はあるのでしょうか?
大野会話の始めに「でも」「いや」といった否定から入りがちな方は要注意。クセになってしまっている方もいますが、言われている側は毎回否定をされている気分になりますよ。また、年齢や性別、立場に関する表現も避けましょう。良かれと思って「若いのにすごいね」「お母さんなのに頑張っているね」などは、固定概念を押し付けていることになるので、使わないでください。

そういう意味で、相手を鼓舞するつもりで「もう○年目なんだから頑張ろう」「リーダーらしく振舞ってね」もNG。そこでポイントなのが、「YOUメッセージ」ではなく、「Iメッセージ」で伝えること。日本語は主語を省きがちですが、「もう○年目なんだから」は、「あなたは、もう○年目なんだから」という「YOU」が主語ですよね? そうではなく、「私は、こう思う」「私の部署では、○年目はこの仕事をする」といった、「I」を主語にして、あくまで「私目線」であることが大切ですね。

ーーありがとうございます! 最後に、働く女性にエールをお願いいたします。
大野:皆さん一生懸命に働いて、周りに気を遣い、自分をないがしろにしてしまうことも多いと思うので、どうか自分を大切にしてください。必要以上に我慢や遠慮をするのではなく、自分の感情や意見を上手にアウトプットすることで、「本当は自分はどうしたいのか」が見えてくるはず。自分を大切にできたら、周りも大切にできるようになりますよ。そのためにも自分の気持ちを適切に伝えるスキルを身に付けてくださいね。