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管理職ラボ

優秀なプレイヤーと管理職は何が違う?陥りがちなマネジメントと組織を活かすリーダーの共通点

正解のないVUCAの時代、管理職には多くの役割が求められています。「組織には心理的安全性を」「とにかく1on1をしよう」「いつでもご機嫌で」…このように、「とにかく変わろう」という言説で溢れる現代。管理職になることへのハードルはますます上がっています。

 

「管理職像に正解はない。『変われ』という言葉に巻き込まれなくて良い」と語るのは、組織開発コンサルタントの勅使川原真衣さん。これまで2万人以上の働く人を見つめてきた勅使川原さんに、組織を活かすリーダーの共通点を伺いました。前後編、後編です。

 

前編記事はこちら

https://bemyself.pasonacareer.jp/skill/skill-4478/

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監修者:勅使川原 真衣(てしがわら まい)

組織開発コンサルタント。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。ボストン・コンサルティング・グループ、ヘイグループ(現コーン・フェリー・ジャパン)での外資系コンサルティングファーム勤務を経て、2017年に組織開発を専門として独立。個人の能力でなく「関係性」という切り口から、組織をより良くする提案を行う。二児の母。2020年から乳がん闘病中。著書に『「能力」の生きづらさをほぐす』(どく社)『働くということ 「能力主義」を超えて』(集英社新書)『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』(ダイヤモンド社)などがある。

ジャッジをせず、相手の視点に立つ「他者への合理性」の姿勢が重要

ープレーヤーとして優秀な人と管理職として優秀な人。その違いは?
勅使川原:プレイヤーはとにかく成果を出す人が優秀とされます。一方、管理職は社会学でいう「他者への合理性」が理解できている人が優秀である印象があります。他者への合理性とは、自分とは違う考えや行動をする相手には、相手なりの理由があることを理解する姿勢です。つまり、相手の行動に対して正しいかどうかジャッジするのではなく、「なぜその行動をとったのか」という視点にたって考えること。

管理職はプレイヤーと異なり、周りの人を活かさないといけません。自分が活躍するために自分が無理するのでなく、周りにも無理させずに組み合わせて活かすことが求められます。「あの人は使えるけど、この人は使えない」というジャッジをしていると、メンバー同士を組み合わせることは不可能です。メンバーに対しては「なぜこの人はこうしたのか」という他者への合理性の視点を持つことが重要だと思います。

ー評価やフィードバックは「ジャッジ」にも近い行為です。管理職が意識することは?
勅使川原:評価は一方的な査定ではありません。自分が提示するものは「あくまで仮説」と思っておいた方が良いと思います。その上で「私からはこう見えるけど、どうかな?」という会話のキャッチボールが大切ですね。 ‎

フィードバックの際は、相手をよく観察して感じたポイントを仮説として提示する。「この間のあの場面、私からはこう見えて、〇〇さんがちょっと困ってるように感じたけど、どうかな?」とか。そして「実際どうだったのか」を相手からフィードバックしてもらう。そして、「それは私の気のせいだった」「じゃあどうすればスムーズに動けそうかな」と、キャッチボールを続けていく。この姿勢がフィードバックでは大切ではないでしょうか。

コミュニケーション論に、一つの正解はない

ーメンバーとのコミュニケーションで悩まないためには?
勅使川原:そもそも「コミュニケーションとはこうあるべき」という正解があると思っている方は、躓きやすいですよね。自分がいて相手がいて、その瞬間にしか答えはありません。

コミュニケーションは双方向に行うことが基本です。自分の希望通りに相手を誘導しようとすることは、コミュニケーションではありません。


世の中のビジネス書で紹介されているコミュニケーションは、自分の思い通りに相手を誘導することをゴールにしているものも多いと感じます。コミュニケーションは相手によって変わりますし、同じ相手でも日によって考えや行動は変わります。相手をよく見て観察するしか、コミュニケーションの方法はないと、私は感じます。

ー管理職が陥りがちな間違ったマネジメントとは?
勅使川原:まず「管理職はこうあるべき」という一つの正解があると思っているパターン。そんなものはありません。組織は人でできているので、どのようなマネジメントが最適かは、それぞれ全く異なります。

二つ目は、自分に似た人を集めれば良い組織になると思っているパターン。これはプレイヤーとして優秀だった管理職が陥りがちですね。組織は凹凸の組み合わせなので、同じような人材ばかり集めたところで、うまく機能しません。

三つ目は、優しさを「決断しないこと」だと思ってしまうパターン。メンバーに対して「あなたはそれでいいんだよ」と全肯定するタイプの管理職。もちろん決めつけてはいけませんが、メンバーを観察し、相互での会話の結果、最終的な方向性を決めることは管理職の役割です。

「ままならなさ」に直面しがちな女性は、管理職として強い

ー「うまく行っている組織」の管理職の共通点は? ‎
勅使川原:やはり「自信を持って過信しない」管理職です。管理職が組織の雰囲気を左右するので。

これまでの人生で「自信があるふり」をする場面は多かったと思います。なので「過信しないこと」って意外と難しいんです。

そう思うと、「ままならなさ」に直面しがちな女性はとても強みがあると思います。まだまだ女性は社会的には圧倒的マイノリティです。ケア労働に時間が取られ、思いっきり自分の人生を生きることはままなりません。自分の能力とは関係なく、人のための時間に振り回されながら仕事することは本当に大変です。でもそれが「自信を持って過信しない」ことのトレーニングなんですよね。

例えば、ご自身が大病されたとか、ご家族の急な介護が発生したとか、お子さんに病気や障がいがあるとか。そういったままならない経験がある人ほど、「いつ何が起こるかわからない」ことを知っている。だから自分を過信しないですし、能力主義から脱して組織は人と人との組み合わせだと、気づくんです。

ー30〜40代の女性管理職や、これから管理職を目指したい女性に心がけてほしいことは?
勅使川原:一元的な評価の物差しを人に突きつける能力主義社会の現代において、ケア労働を担いがちな女性が管理職であることは、非常に難しいことだと思います。だけど自分が頑張ってきたこと含め、これまでの人生が無駄になることはないのです。

絶対に自分なりのやり方を肯定できる日が来ると思うので、周りに流されすぎないでほしいです。世の中には「管理職に必要な◯◯力」といった言説もたくさんあります。ただ、「変われ」という圧や、「あなたはまだまだ」という圧は真に受けすぎず、自分の感じたことを大事にしてください。十分、一生懸命仕事をしているはずなのですから。

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(取材・執筆/菱山恵巳子)

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