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仕事に効く話

小島慶子さん「必要な時に適切な人に頼れるリーダーは、メンバーから信頼される」

キャリアや仕事、人間関係、健康、家族、恋愛…。悩み多き現代女性たちに寄り添う人気企画「お悩み相談室」。今回は、エッセイスト、メディアパーソナリティとして活躍する小島慶子さんが読者のお悩みに答えます。部下への接し方や責任感からの重圧といった2つの悩みへの解決策とは?

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小島慶子さん

エッセイスト/メディアパーソナリティ/昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員
1995年~TBSアナウンサーとしてテレビ、ラジオに出演。2010年独立。2014~23年にはオーストラリアとの二拠点家族生活を実施。息子たちの海外大学進学を機に、2024年からは日本に定住。

自分に反抗的な部下への接し方


(相談者:40代・自動車業界)

自分の指示に反抗的な態度を取る部下がいます。管理職として冷静でいなければと思いつつ、感情的になりそうな自分が怖いです。そういった職場での人間関係に悩むとき、気持ちをどう整理すれば良いのでしょうか?



小島さんの回答「部下が困り事を話し出せる状況を、上司からつくる」

私は会社員時代も含めて部下を持った経験がないのですが、これまでに「一緒に働くことが難しい」と感じるケースが2つありました。事務作業やコミュニケーション面での問題から、業務に支障が出かねない状況だったので、なんとかしないとなと。

そこで、まずは「もし私との仕事にやりにくさを感じているなら、どんな点がやりにくいか教えてください」と尋ねてみました。お互い仕事がやりやすくなることが一番良いので、その道を探るためです。

お一人は「自分は新人なので、年上の小島さんと仕事をする時は緊張してしまってミスが多くなる」ということでした。もう一人は、ご自身の事務処理面での問題に全く気づいていませんでした。

お二人とも、ご自身が何に困っているのか、あるいは現状をどのように認識しているかを率直に開示してくださったので、私も「では周囲の人に助言をもらいながら、具体的にどんな対処かできるか、一緒に考えましょう」と提案することができました

素直に話し合いをした結果、担当を変えた方がお互いのために良いという結論に。双方納得した上で他の担当者に代わり、状況が大きく改善しました。

相談者さんの部下は指示に対して反抗的な態度をとるということですので、何か納得できない思いがあり、それを察してほしいのかもしれませんね。「何か仕事でやりにくいことや、困っていることはありますか?」と聞いてみるのは一案だと思います。

そして「私はあなたの態度に強い不安を覚えている。業務に支障が出ないよう、一緒にいい方法を考えたい」と自分の困り事も伝えてみる。率直にそれぞれの困り事を伝え合ってみるのはどうでしょう

また、そういった話し合いの場には第三者に間に入ってもらうと良いと思います。冷静に話ができますし、「言った」「言わない」になりがちな話し合いの記録も残せます。相手の心理的安全性を担保しつつ、思いがけないリスクから自身を守ることも必要です。

振り返ると、若い頃の私はかなり扱いにくい部下だったろうと思います。経験不足で心に余裕がなく、プライベートの悩みもあったりして、上司に対して素直になれないことがありました。今では、仕事しづらい方に出会うと「私の想像が及ばないところで、この人なりの事情があるのかもしれない。何か工夫ができるかな」と考えるようになりました。

上司として部下にできることは、お互いに困りごとを開示しやすい状況をうまくつくることかなと思います。

責任感が強すぎて無理をしてしまう


(相談者:30代・印刷業界)

去年から管理職にチャレンジしています。でも「自分の役割だから」「任されたのだから」などと何でも重く受け止めてしまい、いつも無理をして疲弊しています。

このままでは潰れてしまう気がしていて。仕事に対する責任感とメンタルのバランスをどのように保てばよいでしょうか?



小島さんの回答「いざという時に頼れる関係を、多くの人と持つ」

しんどいですね。困った時に私がよく思い出すのは、小児科医の熊谷晋一郎さんという方の「自立とは依存先を増やすこと」という言葉です。

熊谷さんは小児麻痺の影響でお身体が不自由で、幼少期からお母様が全力で介護をされていたそうです。お母様との関係が苦しくなった熊谷さんは一念発起、18歳で一人暮らしを始めます。車椅子がないと生活できないので当初は大変なことばかりなのですが、少しずつ頼れる方を増やしていきます。そうすると「こんな時はこの人に頼ろう」「この人がダメならあの人に頼ろう」と、自分で誰に助けを求めるかを決められる状態になる。全てをお母様に依存していた時とは違います。これが本当の自立なのだ、というお話です。

「自立」というと誰にも頼らず全てを自分で抱えて解決することだと思ってしまいますが、そうではない。いかに上手に頼るか、いかにたくさんの頼れる先を持つか。つまり、信頼関係を結び、無理のない範囲で助けてもらえる方をたくさん作って、その時々でうまく助けを求めることが大事なのですね。

管理職になると「何でも自分で解決できなければならない」と気負ってしまうのかもしれませんが、むしろ上手に解決できる知恵があり、必要な時に適切な人に頼れるリーダーの方がメンバーから信頼されるのでは。「なんでも私に任せて!私がなんとかするから!」というリーダーって一見頼もしそうですが、その人が解決できなかったらチームごと共倒れなわけですから。

「責任を持って取り組むけど、自分がもし何かの事情で業務が遂行できなかったとしても、皆さんが困らないようにしておく」というリーダーの方が安心できますよね。

うまく頼れる相手を見つけていくことは、むしろリーダーシップを磨くことでもあると思います。メンタルに無理がかからないよう、早めに誰かに頼ってくださいね。

【回答まとめ】

・困った部下とは、お互いの困り事を伝え合う場をつくる

・自立とは、“誰に助けを求めるか”を自分で決められる状態のこと

・頼れる相手を見つけることは、リーダーシップを磨くことにもなる



(取材・執筆:菱山恵巳子)

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