キャリアアップとライフステージの変化で女性が直面する課題とは?
現代の女性はさまざまなライフステージを通じて、多様な役割を担うようになりました。
特に30代から40代にかけては、結婚、出産、育児、仕事といった重要なイベントが重なりやすく、その中でバランスを取りながら自身のキャリアや生活の舵取りをしていくことが必要になります。
第1回目の連載では「女性がキャリアアップとライフステージの変化で直面する課題」について、3人の子育てをしながら会社経営をしている私自身の経験も通してお話ししていきたいと思います。
目次
けーりん(唐仁原けいこ)さん
・株式会社ライフキャリアcircle代表取締役
1980年生まれ、長野県在住、3児の母。コロナ禍で書き始めたブログが話題になり『主婦業9割削減宣言』(中央公論新社)として書籍化。”女性が主体的に生きる”をテーマにしたオンラインコミュニティが人気を博し、フリーランスから法人化したところ2年で年商5億円の会社に成長。組織拡大の要であり重要な役割は「橋渡し=ブリッジ(Bridge)」のポジションであることを見出し、言語化して発信。2024年8月、『戦略的いい人残念ないい人の考え方』(すばる舎)出版
キャリアアップを目指すほど両立の悩みにぶつかる
私は独身時代から仕事が好きで、時間があればあるだけ、どんどん仕事をしてしまうタイプでした。
でも、出産、子育てがスタートすると、独身の頃と時間の使い方は一変。好きなだけ働くということができなくなり、フラストレーションが溜まった時期もありました。
仕事をしている分、家事にかける時間もない。自分のことだけやるのと、家族のことまで考える必要があるのとで、いかに自分に使える時間が違うのかを実感します。
物理的に時間がなくなることもそうですが、マインドシェアを奪われているということが仕事の集中力に大きく影響していると感じました。
仕事の面白さは“責任感”に比例する部分があると思いますが、マインドシェアを奪われることで、責任が重い仕事を引き受ける意欲が削がれてしまうというケースも多く見られます。
キャリアアップを目指したい女性こそ、「自分が望む形で仕事と家庭の両立が出来ないものか」と悩むことが多いのではないでしょうか。
「母親なのにそんなに働いて・・・」
働く育児女性が抱える“罪悪感”。お母さんという職業の責任の重さに行き詰まりを感じることもあるかもしれません。
「こんなに働いてごめんなさい…と思っているのって母親ばかり」という話を聞いたことがありますが、実際、働く女性の多くは何かしらの“罪悪感”を抱えているのではないでしょうか。これこそ無意識のジェンダーバイアスとも言えるかもしれません。
専業主婦家庭が多かった私たちの親世代から時代は大きく変わり、今では、共働き家庭が多数派を占める時代になりました。それでも、「キャリアアップを目指して働く」という女性は、まだ少数派のように感じています。
専業主婦が行っていた家事・育児と比較してしまうからこそ生まれる“罪悪感”。それがキャリアアップしたいという思いに蓋をしているのかもしれません。でも・・、
「手作りのご飯を作れる日が少なくて申し訳ない」、「家が片付かなくて申し訳ない」
こんな“罪悪感”を抱く女性は少なくないと思いますが、パートナーや子どもがそのことを本当に不満に思っているのか、立ち止まって考えてみる必要があります。
まずは、“罪悪感”を持っている自分に気づくこと。そして、その“罪悪感”本当に正しいのかを俯瞰して考えてみること。それが、キャリアと家庭の両立の最初の一歩かもしれません。
「全てを抱え込んだまま両立するのは難しい」という考え方
私には3人の子どもがいます。仕事と家庭をなんとか両立しようと奮起していた時代は仕事が終わっても、家族分の食事作り、片付け、毎日大量に出る洗濯物。
責任重大な仕事と、休む間もなく次々とやることが降ってくる育児と家事との掛け持ちが思ったように行かない毎日にストレスを貯めることも多かったです。
でも、家族や子供達としても、やらなきゃいけないことに追われて私がイライラしているよりも、例えできていないことが多くても穏やかに過ごしている方が安心するんだということに気づきました。
そして、そもそも、全てを抱え込んだまま両立するのは難しいのでは?と考えるようになりました。
自分がやらなきゃいけないと思い込んでいるもののうち、本当に自分でやらなきゃいけないことは何なのかを明確にしていく必要があります。
その作業はなんのためにやっていて、その重要度はどのくらいなのかを分ける。
また、それは自分でやった方がいいのか、家電や他の人に代われないのかを分ける。
分けて考えていくと意外にも自分でやらなきゃいけないことは少なかったりします。
この考え方は仕事のキャリアアップにも使えるのではないでしょうか。キャリアアップとは自分の実力を上げることと思いがちですが、実際のところ、
・自分じゃなくても出来ることを人にお願いしていくこと
・自分の力を発揮できる重要な仕事に時間を使うこと
こそがキャリアアップと言えます。
「人が快く動いてくれるにはどうしたらいいか」を考える習慣にもなりますし、“自分じゃなくても出来ること”に時間と労力を割いてしまうことを回避できるようになります。その意味で、まずは家庭内の業務整理から試してみましょう。
新しい家電の購入や外注で一時的にお金がかかるかもしれませんが、キャリアアップにも繋がる話なので、先行投資と考え、家庭内から業務整理を始めてみることがおすすめです。
キャリアアップとは「人を頼ること」
キャリアアップというと自分の実力をつけることだと思ったり、リーダーになったら責任を感じすぎる人が多くいるように感じます。
私が会社経営をしていて思うことは、「いかに人の力を借りられるか」の方がキャリアアップへの近道。
人を頼れる人がキャリアアップしていきますし、良いリーダーとして周囲から信頼されます。それは上司に対しても部下に対してもです。
「人に頼る」ことを申し訳ないと思ってしまう人は多いですが、人は頼られるとやる気になって実力を発揮してくれるようになります。
人に気持ちよく動いてもらう、頼り先を沢山作っておくことが家庭でも職場でもスムーズに進んでいけるコツと思っておくことが1番のマインドセットになるのではないでしょうか。
「頼っていい」という姿を見せることは次の世代の希望にもなると思います。キャリアアップを目指すのには強くならなきゃ!と思うのではなく、いかに自分の弱みも見せつつ、頼り先を作れるかの方が重要なのです。
完璧を目指さない
完璧を目指そうとすると苦しくなります。そもそも完璧な人なんて存在しないですし、多少抜けがあるくらいが助け甲斐があるというものです。
親としても管理職としても“完璧になれない自分”を容認できれば、人にも優しくなれます。その方が「人に頼れる」自分になるでしょう。
自分に厳しく、人にも厳しいという人は、プライベートでも周囲に対して厳しくなりがち。
そういう人は、誰かに指摘をされるとつい攻撃的になってしまいますが、「自分は完璧にはなれない」という前提で周囲の人と関わると、指摘もありがたい助言として受け止められるはずです。そうすると、驚くほど人間関係がスムーズになります。
”私の方が頑張っている”論争は無意味
仕事でも家庭でも、度々目にするのが「私の方が頑張ってるのに」という論争。この論争は百害あって一理なしなのですが、疲れているとついモードが入ってしまうことがありますよね。だから、この論争が始まったら、「自分は疲れている」と認識した方が良さそうです。
イライラの原因のほとんどは疲れからきています。自分が疲れていることに自覚を持てるようになると無意味な論争をしないで済みます。
仕事にエネルギーを使うために、余計なことに消耗しないよう気をつけるというのも働く女性にとって大事なマインドセット。
意味のあることにエネルギーを注げるよう日々気をつけていきましょう。イライラしているリーダーは人を寄せ付けなくなってしまいますから要注意です。
目指すは頼り上手のリーダー
キャリアアップを目指すなら、何でもこなせる超人を目指すのではなく、「自分は何を手放せるか」、「どう人の力を借りるか」を考えることが重要です。
得意な分野で貢献して苦手は人にお願いする。
「頼られたら嬉しい」という存在に自分がなることができたら、頼り先は無数に増えていくはず。
目指すのは”頼り上手のリーダー”です。出来る自分を目指すのをやめて、周囲に活躍の場を与える人を目指しましょう。
次回はマネジメント戦略、男性管理職との協業についても書いていきます。
・けーりん(唐仁原けいこ)HP
・「戦略的いい人残念ないい人の考え方(すばる舎)」