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仕事に効く話

ぼる塾・酒寄さんインタビュー② 女性4人組、異色のチームをまとめるカギは「穏やかさ」

人気お笑いカルテット、ぼる塾。リーダーの酒寄希望さんは2019年に産休・育休を取得し、2022年に復帰しました。現在は舞台やYouTubeを中心に活動しています。インタビュー後編では、年齢も立場も個性もバラバラな「女性4人組」のリーダーとして心がけていることや、今後のビジョンを伺いました。

 

※前後編、後編です。前編はこちら

キャパオーバーにならないよう、一番やりたかった舞台の仕事を中心に復帰

―育休復帰後、仕事の場は基本的に舞台、YouTubeですが、どのように範囲を決めているのでしょうか?
酒寄:復帰の方法も4人できちんと話し合ったんです。全てを最初から一気にやるのは絶対にキャパオーバーになるから、まず私が何をしたいかという点を3人は重視してくれて。
私としては「4人で舞台でネタを披露する」ことが一番やりたいことだったんです。もちろんその延長でショーレースのTHE Wで結果を残したいということも話しました。また、個人では育休中にいただけるようになった文章を書く仕事も続けていきたいなと。書く仕事は、自分で手に入れた最初のぼる塾の仕事だったので大切にしたくて。あとは動画編集にも挑戦して、YouTubeも基盤にしていこうと。
舞台は時間がきっちり決まっていますし、いまお世話になっている神保町よしもと漫才劇場にもスケジュールを合わせていただいています。だから育児とも両立がしやすいんです。
多分、皆さんは「なぜテレビに出ないんだろう」と、気になっているかと思います。理由としてはテレビの仕事はやはり時間が読めないことが大きいからです。また、周りの方がとても優しい人たちだとしても精神的にも体力的にもものすごく大変だよと3人も言っていて。それに、例えばこの番組には4人で出るのに、私の都合でこの番組は3人で、という育児のスケジュールによって出る番組を取捨選択する方法もしたくないんですよね。
―ぼる塾の他のメンバーはまだ育児経験がないにもかかわらず、子育てしながら働くことへの理解がとてもあると感じます。
酒寄:そうですよね。特にあんりちゃんは大家族で育っているので、弟妹や親戚の子どもの面倒も見てきたそうです。なので育児の大変さや、子どもと過ごす時間がどれだけ大切なのかもわかっているんです。だからこそ、「酒寄さんが仕事復帰して忙しかったとしても、穏やかな気持ちで仕事も育児もできる状況でいてほしい」と言ってくれました。私が息子と過ごす時間が少しでも元気で楽しい状態で、なおかつぼる塾の仕事もがんばってほしい、と心から思ってくれているんです。

自信を積み重ねながら穏やかに過ごすことで、チームはまとまる

―ぼる塾は「女性4人組」という珍しい体制ですが、チームワーク良く働く秘訣を教えてください。
酒寄:心穏やかでいることです。実は私の育休復帰後、3人がギクシャクしてしまっていた時期がありました。通称「ぼる塾の乱」と呼んでいるのですが(笑)。
3人それぞれが個人の仕事も増えてきて、仲は良いのにふとした時に「私ばっかり頑張っている」と思うようになってしまったんです。その時に解決したきっかけが、私が誰の味方をするでもなく全員平等に接してそれぞれの話を聞いたことらしくて。自分ではそんなつもりはなかったんですけどね。
その時に、3人のことはそれぞれ同じくらい大切な存在、だからこそ私はこれからも心穏やかでいようと思いました。ぼる塾の乱でも、わだかまりは3人にしか解消できないことであって、私がお節介をかけたりかき回すことはしていません。ただ、3人が頑張っていることを認め、私はそれを伝え続ける、ということをしていました。
―酒寄さんは元々穏やかな性格だったのでしょうか?
酒寄:いや、小心者なのに負けず嫌いだし、自己肯定感はめちゃくちゃ低いのにプライドは高い。すごく感情の起伏が激しい人間でした。ぼる塾と過ごしているうちに性格も変わってきましたね。「私なんて」っていつも思っていたけど、ふと「こんなに自分のことを考えられるって、私って逆にものすごく自分のことが好きなんだ」と気付いて。オセロのように視点がひっくり返ったんです。
―考え方ひとつでネガティブ要素もポジティブ要素に変わりますよね。
酒寄:そうですね。4人で過ごすうちに、気付いたら考え方がどんどん変わっていったんですよ。だからこの1年間、もちろん仕事と育児の両立は大変でしたが、精神的にはものすごく穏やかな状態だったんです。「私はぼる塾だ」という自信を少しずつ積み重ねながら、穏やかに過ごせています
―では、ぼる塾のリーダーとして心がけてることは?
酒寄:まずは「愛すること」ですかね(笑)。ぼる塾は誰1人欠けてはいけない大事な人たちです。そのことを念頭に置いて、メンバーに感謝しながら働くことが大事なのかなと思います。
そして、絶対にメンバーのことを自分の定規でジャッジしないこと。憶測で「多分こう思っているだろうな」「この人はこういう人間だから」と、決めつけないようにしています。人の感情は私が決めることではないので、本人と話して、本人の言葉でどう思っているかを聞くこと。
また、メンバーを誰かと比べないこと。あんりちゃんにはあんりちゃんの良さ、田辺さんには田辺さんの良さ、はるちゃんにははるちゃんの良さがあります。それぞれが持っている素晴らしいものを認め、グループだけど一人一人を大事にすることですかね。結局これも「愛」ですが(笑)。

「長く続けられる働き方」を選択していきたい

―今後、ぼる塾としてどんな目標がありますか?
酒寄:ぼる塾は4人が合流したところがゴールではなくスタートだと思っています。これから先、いつまたメンバーが産休・育休を取得するかわかりませんし、田辺さんは留学もしてみたいと言っています(笑)。いつ何人になるかわからないのがぼる塾なのですが、4人では「どんな形になっているかわからないけど、おばあちゃんになってもぼる塾でいたいよね」と話しているんです。
すぐ近くの目標も大事ですが、やはり長く続けられるような働き方を4人でしていきたいです。そうなると、育休制度を作った時のようにこれからも私たちは新しいことをやっていく可能性があります。その時には否定的な意見も出てくると思いますが、どうせ否定されるなら私たちが楽しいと思う道を突き進もう、と考えています。
いま、ぼる塾のメンバーはとても息子のことを可愛がってくれていて、一緒にディズニーランドにも行きました。これから息子が大きくなっても、そうやって皆で出かけられる関係性を持ち続けられるような働き方をしていきたいです。
―女性4人組で育休制度があって…、新しい道を切り拓く時、他の芸人仲間さんたちからはどんな反応ですか?
酒寄:「何かあったらぼる塾に入れて」と言われています。ぼる塾はメンバーが休む時もあるけど、これから先人数が増える可能性もあるかもしれません(笑)。
―事務所の福利厚生のようになっていますね(笑)。では、酒寄さん個人としての今後のビジョンも教えてください!
酒寄:本当に3人が頑張ってくれていたところに復帰したので、これから自分自身で結果を出して「4人のぼる塾めちゃくちゃ面白いな」と思ってもらえたら。育休取得などでキャリアに不安を感じている方にとっても「酒寄さんでも今こうやって活動しているんだから私もなんとかなるだろう」と、少しでも元気を与えられる存在になりたいです。
―最後に、Be myself読者にメッセージをお願いします。
酒寄:仕事と育児の両立は大変ですよね。もっと自分に対して優しくしてあげて良いと思います。
私も初めての育児で、最初は全部完璧に本に書いてある通りにやらなきゃと思っていたし、仕事も早く皆に追いつかなきゃと思って焦っていました。でも、よくよく考えてみたら、私って出産する前、そんな完璧な人間じゃなかったなと(笑)。
元々完璧なことなんてできてなかったんだから、仕事と育児の完璧な両立なんて絶対にできないんですよ。私はそれに気づいてから、少しでも穏やかでいられるように肩の力を抜いてリラックスして過ごしています。

(取材・執筆:菱山恵巳子)

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