会社員のための節税対策! 新NISA・iDeCo・ふるさと納税……、正しい知識を教えて!
今回のテーマは「節税」。増税&物価高が続く昨今、会社員でもできる節税対策があるんです。税金の仕組みを正しく理解して、少しでも負担を減らしましょう!
34歳独身。明るく人懐っこい笑顔で、愛され上手。一方で、ややがさつな面もあり、不用意な一言で周囲をヒヤリとさせることも。営業職から企画職に移り、そろそろマネジメントを任されそう。親からは早く結婚するよう急かされているのも、モヤモヤのタネ。
42歳既婚。いつも落ち着いていて、気配り上手な優しい先輩……というのは表の顔で、実は些細なことで悩みがちな小心者。寝る前はその日の自分の言動を振り返ってモヤモヤするのが定番。現在はミホさんの隣の課の課長。小学生男子の子育て中。
目次
会社員も、節税知識を身に付けよう!
ミホさん
最近じわじわと物価も上がって来ていて、増税の話もよく聞くので、私もきちんと税金について知っておかなければと思っています。
マユミさん
そうだよね。税金のルールも変わってきているから、会社員でも自動的に使えていた控除がなくなって、自分で手続きをしないといけない控除が増えてきているんだよ。
ミホさん
例えばどんなものがあるのでしょうか?
マユミさん
子育てをしている我が家に関係あるものだと、16歳未満を扶養している家庭に適応されていた年少扶養控除は廃止されたんだ。逆に自分で手続きが必要な、iDecoやふるさと納税など、会社員でも関係がある控除が増えたんだよ。
ミホさん
正直、節税対策って年収が高い人だけが考えることだと思っていました。
マユミさん
私たちのような会社員=給与所得者は、年収100万円を超えたら住民税がかかるし、年収103万円を超えたら所得税がかかるんだよ。年収が高いほど税額も上がるから、もちろん年収が高い人ほど節税対策の効果はあるんだけど、いざ年収が増えた時にしっかりと対策できるように、早いうちから節税の知識は知っておくべきかな。大体年収300万円を越えたら節税を考えて良いと思う。
ミホさん
たしかに、会社からもらう源泉徴収を見ると(こんなに税金引かれているんだ……!)とちょっとびっくりすることもあります。どんな節税対策があるのか、ぜひ教えてください!
年末調整では、「生命保険控除」を忘れずに
ミホさん
そもそも節税の仕組みから知りたいのですが、控除の意味から整理いただけますか?
マユミさん
もちろん! 控除というのは、一定の金額を差し引くという意味。税金の控除には「所得控除」と「税額控除」があるんだけど、「所得控除」は税金の計算の元である所得を差し引いて、課税対象となる所得を減らすしくみ。一方、「税額控除」は、税金を直接差し引くしくみなんだ。
基本的には、「所得控除」は年末調整で手続きができるけど、「税額控除」は申告期間内に確定申告の手続きが必要だから、どんな種類があるか把握しておく必要があるよ。
ミホさん
それぞれ、どんなものがあるのでしょうか?
マユミさん
「所得控除」だと、生命保険控除があるよね。1年間で支払った死亡保険料や介護医療保険料、個人年金保険料が対象。もし生活を共にする家族の保険料を払っていれば、家族の分の保険料も控除対象になるんだよ。
ミホさん
生命保険控除は、年末調整の時に私も保険会社からの申請書を提出しています!
節税効果が高い“住宅ローン控除”
マユミさん
「税額控除」では、住宅ローン控除が大きいかな。自宅の購入・リフォームのために住宅ローンを借りた場合、ローン残高の0.7%を最大13年間控除できるの。1年目は確定申告が必要で、2年目以降は年末調整で手続きできるんだよ。
ミホさん
結構大きい控除額になりますよね。今後、家を購入したら忘れずに行います。
マユミさん
実は、我が家も家を購入した時に1年目に確定申告が必要ということを忘れていて、慌てて申請したんだよ(笑)。当たり前だけど、会社からも税務署からも「節税になりますよ」というお知らせはこないからね。
ミホさん
私も確定申告に馴染みがないので、うっかり忘れそうです。今から節税の知識をつけておく大切さがよくわかりました。
マユミさん
「所得控除」では医療費控除・セルフメディケーション控除というのもあるよ。どちらかを選択するのだけど、医療費控除は年間10万円以上(注)、病院で医療費を支払ったら使える控除で、セルフメディケーション控除は自分でドラッグストアで風邪薬などを年間1万2000円以上購入した金額が控除されるものなんだ。
(注)総所得等金額が200万円未満の人は、総所得金額等の5%以上
ミホさん
そうなんですね! なかなか年間10万円以上医療費を使うこともないので、使うとしたらセルフメディケーション控除かなあ。
マユミさん
そうだよね。それにもし大きな怪我や病気をした場合でも、加入している保険会社などから支給された保険金を実際の支払額から差し引いた時に10万円以上じゃないと使えないんだ。
ミホさん
健康なうちは、少しハードルが高いですね。
マユミさん
セルフメディケーション控除を考えるなら、対象医薬品を購入した際のレシートは保管しておいてね。ちなみに対象医薬品には「セルフメディケーション税控除対象」マークが掲載されているから、わかりやすいよ。
節税効果は「iDeCO」、使い勝手は「新NISA」に軍配
ミホさん
よく節税対策で耳にする「iDeCo」と「NISA」についても教えてください。
マユミさん
NISAは2024年から「新NISA」としてリニューアルするのだけど、運用で得た利益が無期限で非課税になるの。
一方、iDeCoも、運用で得た利益が非課税になって、さらに投資額が所得控除の対象になるから、税金を減らすことができるんだ。ただし、引き出すのは原則60歳以降なのと、掛け金の変更が年1回までなんだ。
ミホさん
目の前の節税対策でいうとiDeCOですが、使い勝手の良さはNISAですよね。やはり急な出費などで使いたい時に利益が引き出せたり、掛け金を変えられたりするのは便利です。マユミさんはどちらを運用していますか?
マユミさん
私は併用している。ある程度収入が決まっているから、急に掛け金を下げたくなることもないだろうし、老後資金として少額をiDeCoに投資しつつ、NISAにも分散させているよ。
ミホさん
なるほど。目先のお得感だけでなく、自分の収入や将来設計も考慮した上で、私も決めたいと思います。
会社員ならやるべき「ふるさと納税」
マユミさん
あと「ふるさと納税」は、会社員だと一番使いやすいと思う。自分が選んだ自治体に寄付することで、寄付額のうち2000円を越える金額を所得税・住民税から控除できるんだよ。
ミホさん
例えば、1万円の寄付をした場合、8000円は税額控除になって、2000円で返礼品をもらえるってことですよね?
マユミさん
その通り! ただし、年収によって上限金額が決められているから気を付けてね。ふるさと納税のシミュレーションサイトで年収を入力することで、限度額を計算できるからチェックしてみて。限度額内での寄付におさめないと、逆に損してしまうから。
ミホさん
まずはシミュレーションサイトで確認してみます!
マユミさん
あとは申請も忘れずに! ふるさと納税をしただけでは節税をされないからね。寄付先が5団体以内であれば、「ワンストップ特例」を使って手続きができるし、使わない場合は確定申告が必要だよ。
ミホさん
ワンストップ特例ってどのように使うのでしょうか?
マユミさん
ふるさと納税をポータルサイトから寄付する際に「ワンストップ特例を使いますか」というチェックボックスがあるから、そこにチェック。寄付先から必要書類が送られてくるから、書いて返送すれば、ふるさと納税の節税効果が受けられるよ。
資格取得等で大きな出費があれば「特定支出控除」も確認を
ミホさん
ちなみに会社員の場合、節税対策でよく聞く「経費」などは関係ないのでしょうか?
マユミさん
会社員の場合、経費は基本的に自動で計算されて、こちらから申請をしなくても給与所得控除を受けられているんだよ。
ミホさん
そうなんですね。
マユミさん
ただし、働き方によっては自動で計算される給与所得控除よりも、もっと仕事に関するお金を支払っている人もいるよね。そういった人のために「特定支出控除」という制度があるんだ。
ミホさん
どれくらいの支払いがあると使えるのでしょうか?
マユミさん
年収によるのだけれど、例えば年収500万円だったら、給与所得控除が144万円で、その半分以上の支払いがあったら使えるの。
ミホさん
72万円以上、仕事のための支払いってなかなか発生しないですよね。
マユミさん
例えば、仕事で必要な資格取得のために専門学校に通ったなどがあり得るかな。あとは通勤費、出張の旅費、引越しのための転居費が対象。実は、物に対する支出は対象外なんだよ。
ミホさん
では、「リモートワークのためにデスク一式買い揃えました」等は対象外なんですね。
マユミさん
そういうこと。もしも今後資格試験や研修で自分から支払いが発生した場合、申請するためには、会社から証明書をもらう必要があるから、まずは会社に相談してみてね。
ミホさん
詳しく色々とありがとうございました! さすがマユミさん、お金のことも色々と勉強しているのですね……。
マユミさん
30・40代って、キャリアアップやキャリアチェンジ、あと子育ての時期でもあるし、老後も気になり始めるから、お金の不安って感じやすいんだよ。でもそういった時に少しでも生活にゆとりがあれば新しいチャレンジもしやすいじゃない? だからその一歩として節税は役立つ気がしてさ。
ミホさん
そうですよね。正しく節税することで、お財布にも心にもゆとりが増えたら嬉しいです。さっそく今から対策を始めます!
POINT
①年収が高いほど節税効果は上がるが、会社員ならば誰でも節税知識を知っておこう。大体年収300万円以上なら効果アリ。
②iDeCO、新NISAは節税効果だけでなく、ライフスタイルや将来のビジョンによって使い分けよう。
③ふるさと納税は使い勝手が良いので要チェック。ただし、節税のための申請は忘れずに。
監修者:小林義崇
フリーライター・元国税専門官
2004年に東京国税局の国税専門官として採用。都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事。17年、フリーライターに転身。書籍や雑誌、ウェブメディア、自身のYouTubeチャンネルを中心に、正しいお金の知識を発信中。著書に『会社も税務署も教えてくれない 会社員のための節税のすべて』 (PHPビジネス新書)など。