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仕事に効く話

越川慎司さんに聞く、トップ5%女性リーダーの生産性を上げる習慣(前編)

仕事とプライベートを両立したい女性にとって「短い時間で生産性高く働くこと」は永遠のテーマ。そこで、数多くのデータ分析から「トップの習慣」を導き、全国800社の働き方改革の支援事業を行なっている株式会社クロスリバ―代表の越川慎司さんに、トップ5%の女性リーダーが実践している、生産性が高い働き方を教えていただきました。女性が自分らしく働くためのヒントが詰まっています。


※前後編、前編です。 後編は7/19公開予定。

 

【越川慎司さんプロフィール】
株式会社クロスリバー 代表取締役社長
国内外通信会社などを経て、2005年マイクロソフト米国本社に入社。業務執行役員としてPowerPointやExcelなどの事業責任者を担当。2017年株式会社クロスリバー設立。世界各地に分散したメンバーが週休3日・リモートワーク・複業をしながら800社の働き方改革を支援。著書は『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

トップ5%の管理職に共通しているのは「巻き込み力」の高さ

―まずは、今回教えていただく「トップ5%の女性リーダー」の基準を教えてください。
越川慎司さん(以下、越川):各企業の管理職およびリーダーという職責の中で、人事評価トップ5%の方のことです。800社を超える弊社のお客様の中から特定企業の該当者リストをいただき、本人たちには知らせずに働き方を調査しました。

ちなみに本人たちは「自分がトップ5%だ」という自覚がない方がほとんどです。9割以上の企業が導入している5段階評価の中で、自分がどのランクの評価かはわかっていても、高評価帯の中で自分が上位何%かは、人事や経営陣にしかわかっていないんです。
― なぜ、彼女たちはトップ5%になれたのでしょうか?
越川:彼女たちは成果を出し続けるメカニズムを作っているからです。リーダーの存在意義とは、部下から好かれることではなく、チームの目標を達成することです。チーム目標を達成し続けている人は、個人戦ではなく、チーム戦を行っているのです。つまり、本人の業務遂行能力だけではなく「巻き込み力」が必要。他人を巻き込む能力が高い人ほど、成果を出し続けているのです。

習慣1:自分の「弱み」をメンバーに見せる

―では、短い時間で成果を出す=生産性高く働くために、トップ5%の女性リーダーが実践していることを教えてください。
越川:彼女たちは、メンバー自身で考えて動く自走する組織を作っています。約20年前の会社組織は、上から下に指示を出し、言われたことだけをやった方が成果が上がる仕組みでした。案件の取り方などの成果の出し方にある程度フォーマットがあったからです。しかし、今は言われたことだけではなく、「自分たちで考えて動く」ことが求められています。

そこで、彼女たちは上司が偉いという位置づけではなく、部下とフラットな関係になり、メンバーの強みと弱みを掛け合わせたチームビルディングをしているのです。あるメンバーが苦手なことは、それが得意な他のメンバーの担当にする。もしくはメンバーの弱みを教育で補填する等ですね。
―メンバーの強みと弱みを把握するためには、どうすれば良いのでしょうか?
越川まずリーダー自ら「自分の弱みを見せる」ことです。すると相手も弱みを出してくれます。「私、報告書作るのが苦手なんだけど、あなたはどう?」とリーダーがメンバーに話すと「私はプレゼンが苦手なんです」と、メンバーの弱みがわかり、それぞれ出来ることをして弱みを埋めていこうとなる。つまり、チームの強みがテーブルの上に並ぶのです。

逆に自分の弱みを見せない強い女性リーダーであろうとすると、メンバーと上下関係が生まれてしまい、メンバーも弱みを見せられなくなります。

習慣2:相手が主役のコミュニケーションで、人を動かす

―他にも、生産性が上がるトップ5%の女性リーダーの習慣はありますか?
越川:自分が主役で「伝える」ではなく、相手が主役の「伝わる」コミュニケーションを意識することです。そのため、彼女たちは文章構成力も秀逸です。例えば、とある精密機器メーカーのトップ5%の女性リーダーの話を紹介します。こちらは、その部下が社内に向けて送ってしまったメール。

越川:このメールを受け取った社員のうち、依頼内容を守ってくれた方は全体の11%だけだったそうです。そこで、女性リーダーが文章を修正し、送り直したのがこちら。

越川:ポイントは、「1か月早く支払ができる」という相手のベネフィットを最初に提示すること。すると、2行目の依頼文に興味関心を持たせることができます。

そして最後にひと言、行動障壁を下げる一文を入れる。これはアンケートを取る場面でも使われるワザで、「アンケートに答えてください」より「2分間のアンケートに答えてください」と伝えると、回収率が上がるのと同じです。

結果、78%の方がこの依頼通りに動いてくれたのです。同じ時間で作った文章でも、ちょっと構成を変えるだけで効果が7倍も変わる。このような人を巻き込む文章力を彼女たちは持っているのです。 相手を主役にし、相手にとってのベネフィットは何か、どうしたら行動してくれるかを考えたコミュニケーションを取るのが、彼女たちの特徴です。

習慣3:「やる気」に頼らず働く仕組みをつくる

―トップ5%の女性リーダーのタスクマネジメントの特徴についても教えてください。
越川:彼女たちは目的から逆算してプロセスを組み立て、やる気に頼らず仕事をする習慣を持っています。そして休憩の取り方にも特徴があります。疲れていないのに休み、スキマ時間に細切れの作業をして、最後の“詰め”に一番エネルギーを費やしています。そして与えられた期限よりも少し早めに提出する。だから差し戻しがあっても余裕を持って対応できるし、体力も温存している分、次の仕事も早く取り掛かれるのです。

越川:私もよくあるのですが、どうしても“やる気”が出るまで着手せず、期限にも間に合わないということってありますよね? しかし、結局のところ期限に間に合うかは初動が早いかどうかにかかっているのです。また、体力を使って一気に空いた時間に仕事を片付ける方は、期限には間に合っても体力を使い果たす分、次のタスクの初動が遅れてしまいます。

―わかってはいても、急に働き方の習慣を変えられないのも事実です……。
越川:そこで働き方に対する「三つのスイッチ」という考え方を取り入れてみてください。①仕事を見極め、②初動を速く、③業務処理能力を上げる、というスイッチです。多くの企業は業務効率化をしようとすると、③ばかりに注力してしまいますが、実は①先にやらないことを決め、②自分がやるべきことは初動を早く、③その中で時短術を実践することが業務への正しい取り組み方です。

習慣4:積極的にタスクを手放す

―何をやらないべきか「仕事を見極める方法」について具体的に教えてください。
越川: 無駄なことを避けるために、タスクに対して5つの判断軸を持つことです。①自分でやる、②誰かに任せる、③手放す・捨てる、④保留する、という判断軸です。

越川:③④のように「タスクをしない」という選択肢がある点がポイントです。できない仕事を受けてしまうと、長時間労働は避けられません。仕事を受けるか受けないかで、自分と部下の労働時間が決まることをトップ5%の女性リーダーは理解しているのです。

そしてタスクを受ける場合でも①自分でやるパターンと②他の人がやるというパターンに分かれます。自分でやる場合には、3分以内でやるパターンと期限付きで後でやるパターンがあります。

―「後でやる」タスクには、どういったものが含まれるのでしょうか?
越川:タスクの評価軸を緊急度と重要度で考えた時、重要度は高いけど、緊急度が低いタスクのことです。例えば若手の育成、新しいテクノロジーの導入、業務改善などです。これらにはしっかりと時間を費やさなければなりません。彼女たちは保留にしつつ、時間の余裕がある時にきちんと着手しています。
ーたしかに後回しでも良いけれど、チームとして成果を出すためにはかなり重要度が高いタスクですね。
越川:自分がいなくても自走する組織を作るためにはこのようなタスクに取り組まなければなりません。そして、その時間を作るためにもタスクを手放す勇気も必要なのです。彼女たちは、自分が担当していた主要顧客も部下に渡しています。その代わり、部下のミスやうまくいっていない箇所を補完したり、緊急時に対応したりサポートもしています。

プレイヤーをある程度辞めることで時間と精神の余裕ができて、チーム力を上げるために何が必要なのか見えてくると思います。部下を信じ、権限委譲していくことがトップ5%リーダーが残業を少なく成果を出し続けている理由です。

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後編では、越川さん自身が行なっている「週休3日制」の実践方法や、これからの時代の女性の働き方についてお聞きします。

(→後編はこちら)

(取材・文/菱山恵巳子)

 

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