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『夫婦会議®︎』に学ぶ①。産後クライシス予防に繋がる夫婦の「対話」スキルとは

産後、働き方や家事・育児の分担を巡って夫婦でギクシャク……。共働き夫婦にとって、産後2年以内に夫婦の愛情が急速に冷え込む「産後クライシス」は、なんとしても回避したい身近な問題でもあります。

2015年の創業以来、夫婦の対話メソッド『夫婦会議®︎』を展開するLogista株式会社の共同代表、長廣百合子(妻)さんと長廣遥(夫)さんも、かつては産後クライシスを経験し、乗り越えた当事者。

結婚10年目。今では2児の子育てを楽しみながら、家庭でも仕事でも“共同経営者”として協力し合っている長廣さんご夫妻に、産前産後の共働き夫婦が知るべき「夫婦の対話スキル」を教えていただきました。

※前後編、前編です。

産後の危機から生み出した「わたしたち」でキャリアを切り拓く方法

―まずは長廣さんご夫婦が提供されている『夫婦会議®︎』とはどんなサービスなのか、ご紹介ください。


百合子:『夫婦会議®︎』とは、人生を共に創ると決めたパートナーと、より良い未来に向けて「対話」を重ね、行動を決める場のこと。ひとことで表現するなら「わたしたち」の答えをつくるための夫婦の対話サービスです。自分の意見を通したり相手を変えたりするために行うものではなく、「わたしたち」で答えを創り出すことを重視した夫婦の話し合いをサポートしています。

:『夫婦会議®︎』という言葉だけが独り歩きして「うまくいかない話し合い」を繰り返すことが無いように、意味を定義した上で、主に結婚・妊娠・産後・育児期のご夫婦向けに、効果的な夫婦の対話メソッドとしてお届けしています。

百合子:ちなみに、開発の背景には私たち自身の「産後の危機」があります。第1子誕生後に、仕事と家庭の両立を巡る葛藤や、産後うつ、産後クライシスを経験し、産後10ヶ月目には離婚の危機に陥ったんです。
でもそのなかで、「対話」を通じて夫婦のパートナーシップを発揮することの大切さや、「わたしたち」でキャリアを切り拓くことの意義を実感することができた。何より、子どものためにもより良い家庭環境をつくりだしていこうと協力し合ってきた経験が、『夫婦会議®︎』の原点になっています。

:そんな『夫婦会議®︎』には、大きなポイントが2つあります。
1つ目は、「世帯経営」という考え方を土台に据えている点。『夫婦会議®︎』では夫婦を世帯の共同経営者と考え、「わたしたち」で未来を創る姿勢を大切にしています。
ポイントの2つ目は「対話」が要という点。『夫婦会議®︎』では、夫婦のコミュニケーションを3段階に分けて、「対話」を最終ゴールに据えて話し合う方法をオススメしています。

①会話
たわいもないお喋り。挨拶・連絡を含む、気楽に交わすコミュニケーション。
②議論
「私はこう思う」「僕はこう思う」など、互いの意見を出し合うコミュニケーション。
③対話
共通価値の創造。価値観の違いを尊重し、互いに納得のいく結論を導き出すコミュニケーション。
このように「会話」と「議論」を経て、「私たちとして、どうする?」と「対話」に発展させていくことが大切です。

百合子:「わたしたち」の答えは一筋縄では作れないもの。最初は、本音を恐れて「会話」止まりになったり、「議論」から夫婦喧嘩に突入したりするかもしれませんが、「対話」を見据えたコミュニケーションの積み重ねが、夫婦としてのキャリア(人生)を豊かにしてくれます。

他人事ではない「産後クライシス」。本音で「対話」できる夫婦関係を育もう

―長廣さんご夫婦も経験された産後クライシス。何が原因で起こるのでしょうか?


百合子:原因はいくつかあるのですが、まずは産後に増える「オキシトシン」というホルモンが影響しています。別名「愛情ホルモン」とも言われており、わが子を守る意識が高まる一方で、育児に非協力的な人に対して攻撃的になる側面もある。そのため、夫の育児や家事への取り組み方に不満が募ると、産後クライシスの引き金になると考えられています。

:僕たちが産後クライシスを経験した時も似た状況でした。僕自身は子どもの頃から「一家団らん」に憧れを抱いていたので、とにかく妻と再婚できたことや、はじめて子どもが生まれたことにワクワク感でいっぱいだったんです。ただ、当時は「男は仕事、女は家庭」という性別役割意識の塊でもあった。いざ子どもが生まれても、家事や育児に対して補助的役割を担うばかりで、自分は家族のためにしっかり働いていれば自動的に「一家団らん」が訪れると思っていたんです。

百合子:一方私は、結婚や育児は仕事の足枷になると考えて20代を過ごしていたので、「私からの決別だ」という気持ちで結婚を決断。でも妊娠中には、つわりもひどくて仕事に穴をあけるようになると不安が増し……。「仕事ができないなんて人生終わった」という絶望感が勝る妊娠生活を過ごしていました。
こうした不安感を話し合わないまま、24時間体制の育児に突入。夫は働き方を見直すわけでもなく、妻の私が家事育児の主体者という構図も変わらない。「夫婦で働き方や暮らし方について対話する機会」が圧倒的に不足するなか、産後うつの症状も現われ、産後クライシスに突入しましたね。


―そこからどのように夫婦関係を修復されたのでしょうか?


:産後半年を過ぎた頃に「家事・育児はわたしだけの仕事?」「わたしも仕事を再開したい」と、妻から具体的な言葉がありました。そこで「週に2回は19時に帰宅して、僕も一緒にやっていく」と約束。でも帰宅が遅れたり、家事・育児を片手間で行う状況も多く、妻との関係は悪化するばかり。仕事でもミスが重なるようになってしまいました。
そうして産後10ヶ月が経過した頃に離婚の危機を感じ、「家庭も仕事も両方大切にしたいのに、できない。でも仕事(収入)を手放すわけにはいかない」と妻の前で弱音を吐き出し大号泣。
その時に妻が「もういいよ。家庭を大切にした働き方に変えよう。そのために収入が下がっても構わない」と言ってくれて。そこで一気に肩の荷が下りた感覚がありました。「わたしがあなたの分まで稼ぐよ」との言葉も続き、「大黒柱として妻の分まで働かなければいけない」という自分の思い込みがプレッシャーに繋がっていたことにも気づきましたね。

百合子:「産後も共働きで」と話していたのに、夫の中ではリアリティが無く、金銭的なプレッシャーが膨らんでいたことに驚きました。でも、本音に触れて、「私も働いて一緒に家計を支えたい」という意志をあらためて伝えられ、そこから「家の仕事も外の仕事も協力し合い、一家団らんを実現できる夫婦でいよう」と、夫婦のビジョンを確認し合う「対話」に進むことができたのは良かった。
いま思えば、これが最初の『夫婦会議®︎』ですね。

産前産後の夫婦におすすめの「対話」のテーマ

―すでに産後クライシス状態で対話をするのは、少しハードルが高いとも感じます。


百合子:たしかに、産後クライシスの状態での「対話」は難易度が上がると思います。日常的な「会話」が減っていたり、意見を伝え合う「議論」を避けたりするケースもありますから、その状況で「対話」を目指すのは容易ではありません。
でも、夫婦の危機への対処法として代表的なカウンセリングや離婚相談などに抵抗があったり、自分たちのペースで関係改善を目指すご夫婦には、『夫婦会議®︎』の対話メソッドが力になれると感じます。
諦めずに夫婦で対話力を育んでいく意識を持てれば、マイナスの夫婦関係がプラスに転じるチャンスはある。わたしたち夫婦が立証済みです(笑)。

―ありがとうございます。対話は産後クライシスを防ぐことにも有効でしょうか?


:はい、役立つと思います。「産後クライシス」は産後の変化に対する主体性の問題が大きいのですが、対話で創り出した「わたしたち」の答えは、自分で決めた答えでもあるので、当事者意識が芽生えます。何より、やらされ感が無いため、主体的な行動につながり効果的です。
また、産前の夫婦には、何かしらすれ違いが起きても修復する時間のゆとりがありますが、産後は、すれ違う要素が圧倒的に増える一方で、修復に充てられる時間は減ってしまう。
だからこそ、夫婦間で「対話力」を育むことが重要です。忙しい日々の中でも、ちょっとしたことから「働き方、家事育児の協力体制」などの大切なことまで、前向きに対話できる関係性づくりを意識的に行うことが、産後クライシスを防ぐ一助になります。

ー産前産後の夫婦は、どんなテーマから話し合うべきでしょうか?


百合子まずは「ビジョン」から話し合ってみてほしいです。
ビジョンというのは「自分たちがどういう夫婦、家族でいたいのか」という話。在りたい姿や目指したい未来、夢や目標に関わる重要なテーマでもあります。恐らく結婚する時には話していることですが、ライフイベントを機に変わっていくこともあるもの。その意味で、産前産後に限らず、夫婦で定期的に確認することがオススメです。

:ビジョン」の共有ができたら、その後は夫婦で問題になっていることや話したいテーマに自由に取り組んでみてほしいですね。
例えば『夫婦会議®︎』では、「ビジョン、家事、子育て、仕事、お金、住まい、セックス、自由時間、美容と健康、人間関係(祖父母との関係など)」の10個の基本テーマを用意していますが、「何から話し合えば良いか分からない」という場合には、ビジョン→家事→子育て→仕事→その他の順で対話するのがスムーズ。こじれている状況を紐解く手順としては適切だと考えています。

百合子:対話を通じて「わたしたち」の答えを創り出していけるようになると、夫婦間に安心感と心強さが芽生えます。夫婦関係の充実は、日々の家事や育児に対してはもちろん、「わたしらしさ」を仕事に活かす上での原動力にもなりますね。



産後クライシスをはじめとした夫婦の問題解決に役立つ「対話」スキル。後編では、引き続き『夫婦会議®︎』の対話メソッドをベースに、共働き夫婦がお互い気持ち良く働き、家事・育児を楽しむための心得や対話のコツを教えていただきます。


長廣 百合子(ながひろ ゆりこ)/共同代表 CEO 『夫婦会議®︎』開発研究者のイメージ画像

長廣 百合子(ながひろ ゆりこ)/共同代表 CEO 『夫婦会議®︎』開発研究者

1984年、福岡生まれ。2児の母。九州産業大学卒業後、2006年に(株)毎日コミュニケーションズ(現(株)マイナビ)に入社。退職後、個人で「次世代リーダー発掘・育成事業」をスタート。2013年に結婚。翌年30歳で第1子・長女を出産。2015年7月より夫・遥と共にLogista株式会社を設立。夫婦の対話メソッド『夫婦会議®︎』を開発。2021年には第2子・長男を出産。

長廣 遥(ながひろ よう)/共同代表 COO 『夫婦会議®︎』開発研究者
1976年、東京生まれ。2児の父。東京工業大学大学院修了後、2002年に(株)リクルートに入社。退職後、大分にて地域農業のグランドデザインづくりに挑戦するもヘルニアで断念。福岡に拠点を移し、地域活性コンサルティングに5年間従事。前妻と離婚後、2013年に妻・百合子と再婚。2015年7月に夫婦共同でLogista株式会社を設立し、夫婦の対話メソッド『夫婦会議®︎』を開発。

Logista株式会社(夫婦会議®)

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