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マイキャリアストーリー

『今まで見たことのない“空の景色”を作り上げていきたい』
株式会社ZIPAIR Tokyo 執行役員 安田美智子さん【前編】

誰しも迷うキャリアの決断。管理職として活躍する女性はいつ、何に悩み、どう決断してきたのか。キャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。

今回は、株式会社ZIPAIR Tokyo 執行役員の安田美智子さんにお話を伺いました。

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安田 美智子(やすだ みちこ)さん

株式会社ZIPAIR Tokyo 執行役員
2000年に日本航空に入社。国際フライト旅客部フライトアテンダント、顧客戦略部推進グループ チーフキャビンアテンダント、客室乗員部客室乗員室グループ長を経て、2021年に株式会社ZIPAIR Tokyoに出向。22年10月より現職。

ちょうどよいサービスを追求する、「NEW BASIC AIRLINE」の考え方に共感

2020年に運航開始した中長距離国際線エアライン「ZIPAIR」。日本航空(JAL)100%出資で設立され、成田空港を拠点に北米やアジアの10路線を運航しています。
日本航空で客室乗務員としてキャリアを重ねてきた安田美智子さんは、2021年に同社に出向。ZIPAIRが掲げるコンセプト「NEW BASIC AIRLINE」に共感して、フルサービスキャリア(FSC)でもローコストキャリア(LCC)でもない新しい基準を作り、フライト時間をより短く感じられるエアラインを目指してきました。22年10月には執行役員に就任し、多様なバックグラウンドを持つメンバーの強みを最大限に活かす組織づくりを進めています。
「ZIPAIRでは、機内無料Wi-Fiの提供やフルサービスキャリア並みの座席幅、ワンランク上のフルフラットシートの完備など、ローコストキャリアでありながら充実した環境を整え、お客様にとって『ちょうどよい』過ごしやすさを追求しています」
業界の常識にとらわれない多様な働き方も、ZIPAIRの特徴の一つです。
「客室乗務員と地上係員(グラウンドスタッフ)の兼務が可能であるほか、総務や広報、マーケティングといった間接業務に挑戦し、キャリアの幅を広げるメンバーもいます。業界外からの中途入社メンバーが多いからこそ、『こんなサービスがあったら良い』『こんな制度を作ってはどうか』と前例にとらわれずに発想し、実現に向けて動いていける面白さがあります」
子どもの頃から客室乗務員が憧れの職業だったと話す安田さん。当時大ヒットしたドラマ『スチュワーデス物語』を見て、「この仕事は自分に向いている、と強く思ったことがきっかけでした」と笑顔で振り返ります。
「何事もなりきるのが大好きだったので、ドラマの主人公の真似をして、『将来はこの仕事に就こう』と心に決めました。学生になってもその思いは冷めることなく、就職先は航空業界しか見ていませんでした」
しかし、当時は就職氷河期。安田さんが就職活動をしたその年は客室乗務員の採用枠がなく、応募の機会すらありませんでした。
「短大では英語学科を専攻し、短期留学も経験し、すべては客室乗務員になるために行動していました。その入り口が閉ざされたと知ったときは、これからの人生に続く道がすべて閉ざされたように感じました。しかし、『採用枠がない』という事実は、自分には変えられないこと。くよくよしている場合ではないと決意し、今できることに目を向けて一般企業に就職し、秘書業務を約3年間経験しました」
たまたまの配属で就いた秘書の仕事でしたが、担当した上司を「注意深く見守る」ことが求められる職務は、のちに客室乗務員としての業務に大きく役立ちました。
「当時は、できることから一つずつ取り組めば、新しい可能性が見えてくると信じるしかありませんでした。だからこそ、当初は希望していなかった秘書の仕事にも、学びを得ようと真摯に向き合えたと感じています。
業務に慣れてくると、『上司は今日、朝食を抜いてきたんだな』『睡眠時間が短めだな』と推察できるように。さらに『来週には会議が入っているから、今週はスピード感を持って業務を進めていかないと間に合わない』と、先取りして動くようになりました」
相手の状況をよく見極めながら、一定の距離感を保って接する。その「心地よい距離感」は、ZIPAIRがお客様に提供したいサービスコンセプトにも通じていると話します。
「相手に負担を与えず、一方で適切に見守られているという安心感につながる心地よさは、良い距離感を保てて初めて提供できるものです。客室乗務員としての仕事でも、現在のZIPAIRでサービスを考える仕事でも、あの3年間の経験は確かに活かされています。人生の点と点は必ずつながると強く感じています」

念願の客室乗務員へ。余裕を持つ大切さを学んだ新人時代

秘書の仕事に邁進していた3年間で、客室乗務員になるという夢は「ほとんど忘れかけていた」と振り返る安田さん。日本航空への転職のきっかけは、旧友からの電話だったそうです。
「ある日、仕事中に友人から電話がかかってきて、『日本航空が客室乗務員を募集しているから、今すぐ応募して』と勧められました。仕事が忙しいからそれどころではないと返すと、『何を言っているのか』と強い口調で促されました。『子どもの頃、客室乗務員の真似をして遊んだことを思い出して。あんなに憧れていた仕事の募集があるのだから、チャンスを逃さないで』と熱心に言われ、その勢いに押されて履歴書を作成し、その日のうちに投函しました。まさに、人生を変えた1本の電話でした」
長く夢見ていた客室乗務員への転職でしたが、「ドラマで見た景色と同じだ」と高揚していたのは最初だけ。厳しい訓練を重ねる中で、自らの未熟さを痛感する日々だったと話します。
「客室乗務員は保安要員であり、お客様の命をお預かりするという重大なミッションを背負っています。訓練を全うして、あらゆる手順を覚えなければと、とにかく必死でした」
新人時代は、限られたフライト時間内にやるべきことの多さで常に手一杯。ベテランチーフの先輩に「富士山がとてもきれいだから、窓の外を見てみて」と言われても、その余裕はなかったと当時を振り返ります。
「景色どころではない…と思いながら窓のほうを見て『本当にきれいですね』と言ったら、『富士山はそちらではないですよ』と指摘されました。余裕を失えば景色さえ見えなくなる。どんなに忙しくても、余裕を持つことの大切さを学んだ出来事で、今も大事な教訓にしています」
客室乗務員として国内外を飛び回る生活では、時差への対応などフィジカル面で大変なことも多かったそう。ただ、「厳しい仕事だと理解していたので、転職後のギャップはほとんどなかった」と言います。
「月並みですが、お客様からの『ありがとう』『良いフライトだったよ』という一言で、すべての苦労が吹き飛びます。またお客様の笑顔が見たい、という気持ちが毎日の原動力。お客様に支えられて、今日まで続けてこられたと思っています」

「後編記事」につづきます。





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取材・執筆:田中 瑠子

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