『生き生き働く姿は、子どもにもプラスになるはず』
株式会社カネカ ユニットリーダー 中原さん【前編】
誰しも迷うキャリアの決断。管理職として活躍する女性はいつ何に悩み、どう決断してきたのか。キャリアの分岐点と決断できた理由を語っていただきます。今回は、株式会社カネカ Healthy Foods Strategic Unitリーダーの中原さんにお話を伺いました。
中原(なかはら)さん
株式会社カネカ
Healthy Foods Strategic Unitリーダー
「眠れる技術に花を咲かせたい」との思いを胸に入社
- 2024年、上席幹部(部長級)に昇格した中原さん。どんなきっかけで株式会社カネカに興味を持ち、どのような思いで入社したのでしょうか。
- 「大学時代は経営学、特にマーケティングを専攻していました。周りにはB to Cの企業に入社する人が多かったのですが、私はインターンシップを通じて化学メーカーに興味を持ったことから、カネカへ入社しました。
化学メーカーは、本当に多くの研究成果や技術を持っていますが、まだ世の中に出せていない成果や技術がたくさんあります。理系出身者が多い化学メーカーに経営学部出身の私が入社することで、『眠れる技術に花を咲かせたい』と考えました。まだシーズとニーズがマッチングできていないものを事業化・商品化していくところに携わりたいと思ったんです」
- カネカに入社した中原さんは1年間、食品事業部(当時)の工場で、油脂製造に関わる技術業務に従事します。
- 「文系なのに技術に関わる仕事をするなんて、思ってもみませんでした。ですが、試作を通して油脂の違いで食品の味が大きく変わることを体感し、『この技術を生かして価値を創る仕事は楽しいのでは』と思うようになったんです。そこで食品事業部のマーケティンググループへの異動を希望しました。
そうして配属されたのは、コンビニのプライベートブランドのパンやスイーツに関わる部署です。コンビニでは毎週、2〜3品の新商品が発売されます。その新商品を原料メーカーとして毎週提案し、コンペで勝ち取っていく仕事をしていました。
10年以上関わっている中で特に印象に残っているのは、あるコンビニのスイーツ企画です。当時、コンビニスイーツと言えば『安いけど味はそこそこ』というイメージが一般的でした。そのイメージを払拭するべく、少し価格を上げても『美味しいよね』と思ってもらえるような商品を育てることに挑戦し、最終的にヒット商品にすることができたんです。
その時は、普段なら競争相手になるような企業とも一緒になって、“商品を育てる”という共通の目標に向かって試作を繰り返しました。その中で『この会社には、こんな技術があるんだ』と学ぶことができ、他業種の方々と一緒に仕事をする貴重な経験もさせてもらいましたね」
「マミートラックにはさせない」という上司の言葉が支えに
- 「眠れる技術に花を咲かせたい」という思いを胸に、食品事業部マーケティンググループで仕事に邁進してきた中原さん。入社7年目に出産し、育児休業を取得します。
- 「私の母が働きながら子育てをしていたので、私自身も子育てしながら働き続けたいと考えていました。当時の上司にとって、私が初めて育休から復職するメンバーだったのですが、その上司が『マミートラックにはさせないから』と言ってくださったことは大きな支えになりましたね。実際に、復職前から細やかにどのような環境ならやっていけそうかヒアリングしてくださり、やりがいを持って仕事ができる環境を作ってくださいました。
また、私の部署の人と人とのつながりが深かったことも、育休から復職するにあたって非常にありがたかったです。育休中、職場のメンバーが自宅に来てくれて、食事会をしながら、今の職場で起きていることを話してくれたりしたんです。アットホームな人間関係があったので、スムーズに復職できました」
仕事でも子育てでも、大事なのは「納得感」
- 復職する前は、それほど不安を感じていなかったものの、いざ復職してみると、仕事と子育てのバランスの取り方で悩んだ時期もあったと中原さんは語ります。
- 「やはり仕事も子育ても頑張りたいと、もがき苦しんでいた時期はありました。ときには、うまくバランスが取れずに体調を崩してしまったこともあります。
そんな中、社内の女性活躍推進プロジェクトの一環で、“仕事を効率的に回すための方法”を参加者みんなで考えるプロジェクトに参加したことがありました。そのプロジェクトを通じて、『誰でもできる仕事の中に、いかにして自分にしかできない付加価値を加えるか』という視点を得ることができたんです。そこから、自分の中での葛藤が解消されたところがありました。
それまでは、限られた時間で働く中で、『自分はちゃんと会社に貢献できているのかな?』と、不安に思う部分があったんです。でも、誰でもできる仕事の中に、自分だからこそできた要素を1つでも多く入れることで、『時間がなくてできなかった』ではなく『時間がなかったけど、これはできた』と思えるようになりました。それが自分の納得感につながったんです」
- 子育てでも、そうした“納得感”を大事にしていると中原さんは話します。
- 「2012年に1人目を、2018年に2人目を出産しています。特に2人目が生まれてからは、全てを自分でやりたいという思いはあっても、現実としてなかなかそこまでの時間が取れません。私自身が体調を崩してしまっては元も子もないと学んでからは、食事は市販品も上手く使うなど、手を抜けるところは抜くようにしました。また、シッターさんや病児保育施設、母など、さまざまな人にも頼ってきましたね。
その一方で、私自身の“納得感”のためにも、「この時間は子どもたちと一緒に思い切り楽しむぞ」と少ない時間の中に心に残る体験をつくることを心がけてきました。
子どもはどんどん成長するので、少しずつ手がかからなくなりますし、逆に協力してくれるようにもなります。そういった子どもの成長に合わせて、周囲に頼るところと自分でやるところのバランスを増減させて、“自分の納得できるバランス”を試行錯誤してきましたね」
→後日公開される「後編記事」に続きます。
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写真:MIKAGE
取材・執筆:北森 悦