【千葉佳織さんインタビュー】部下へのフィードバックや商談。最適な話し方とは
会議や商談、部下の指導など、何かと人前で話す機会が多い管理職。しかし、「話し方」について学んだことがある方は少ないのではないでしょうか? 『話し方の戦略「結果を出せる人」が身につけている一生ものの思考と技術』(プレジデント社)の著者であり、スピーチライターの千葉佳織さんに「話し方」の基本を伺うインタビュー。後編では、シチュエーション別の上手な話し方のポイントを教えてもらいました。
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千葉佳織さん
株式会社カエカ代表/スピーチライター
1994年生まれ。15歳から「弁論」を始め、2011年から2014年までに内閣総理大臣賞椎尾弁匡記念杯全国高等学校弁論大会など3度の優勝経験を持つ。慶應義塾大学卒業後、新卒でDeNAに入社。2019年、株式会社カエカを設立。AIによる話し方の課題分析とトレーナーによる指導を組み合わせた話し方トレーニングサービス「kaeka」の運営を行う。
部下へのフィードバックは「Good」と「More」の割合を意識
- ―管理職にありがちな「良くない話し方」の具体例を教えてください。
- 千葉:もちろん人によるという前提はありますが、例えばよくあるのが上層部から降りてきた伝達事項を、ただ羅列して部下にコピーのように話すということ。そこに自分自身の想いや意図が感じられないと、部下にはなかなか話が伝わりません。
- ―管理職の悩みで多いのが部下へのフィードバック。どのような話し方が効果的ですか?
- 千葉:部下との関係性次第でもありますが、「Goodのフィードバック」と「Moreのフィードバック」の比率を考えて話す必要があると思います。例えば3分間話すとして、2分30秒も「もっとこうしてほしい」というMoreの話をしていたら、相手はすごく責められたという感覚になるはずです。
「話を聞いた部下に最終的にどういうイメージになってほしいか」を逆算して、良いところの話と、より改善するべきところの話のバランスを調整すると良いと思います。
具体的には「部下がすごく頑張っていて、その頑張ったことの再現性を高めてほしい」ならば、Goodの割合を増やす。Goodというのは、ただ相手を持ち上げるだけではなく、行動の再現性を促すものです。「またこの行動をしてほしい」という願いを込めて、相手のスキル向上のために伝えます。
また「自分ができているところとできていないところを素直に把握しながら成長してほしい」という目的のフィードバックならば、GoodとMoreは1対1が良いでしょう。
- ―Moreのフィードバックこそ難しいと感じます。話し方のポイントは?
- 千葉:一点目は、マイナスな言葉を調整すること。「でも」「一方でこうだよね」という言葉を使うのではなく、「もっとより良くするなら」「ここに付け加えるとしたら」とか。言い換えをすることで歩み寄りが示せます。
二点目は、事実と解釈を分けて話すこと。例えば「これ、すごく良くないと思ったんだよね」という感情論は、個人の解釈になります。解釈だけ伝えてしまうと、相手からしたら納得感を得にくい。そうではなく、「この時にこういうことをしましたよね」という事実を提示する。その上で「それはこういう受け取り方をされる可能性がある」という解釈を示す。事実があって解釈が成り立っているということを意識しながら話すことはとても重要です。
- ―商談やプレゼンテーションでの話し方のコツはありますか?
- 千葉:事前準備をしっかりすることです。誰しもやりがちなのが、スライドなどのプレゼンテーション資料はしっかり作り込むけど、本番まで一度も話さないというパターン。アウトプットは、資料と「話」がセットということをお忘れなく。「話」だけ練習していないというのはあるあるだと思います。
具体的な「話」の準備として、トークスクリプトも用意してください。相手の状況に合わせたスクリプトを作り、本番前に上司や同僚などの前で実際に話す。そうすると「大切ではない部分に思ったより時間を割いている」「間延びしている」「ここで相手のニーズが聞けそう」などのフィードバックがもらえますし、意見交換もできます。また、自分のプレゼンテーションを録画して見返す方法でも効果がありますよ。
事実と解釈を分けて話せば、夫婦のすれ違いも減るかも
- ―プライベートでも夫婦間で「話が伝わらない」と感じる場面もあります。夫婦の対話での話し方のコツも教えてください!
- 千葉:「Moreのフィードバック」のポイントと同様、事実と解釈を分けて話すことかなと思います。話したいことが浮かんだ時に、自分の感情ベースのことなのか、それとも事実として起こったことなのかを冷静に見極める。一つの事実だけにフォーカスすると、そこまで言い合いになることもなく、伝わりやすくなると思います。
また、特に対立してしまう時は、自分だけではなく相手も何かを思っているということ。相手がどういうことを考えてくれているのかに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。そして「きっとこういう考え方をしてくれていると思うんだけど、そこに関してはすごく感謝している」ということまで相手に伝えられると良いですよね。
あと私が個人的に意識しているのは、何かを二人で決断する時は「こういう決断をするとこうなっていそうだよね」と、現時点のことだけでなく、ちょっと未来のこともセットで話すようにしています。
とは言え、ネガティブなことを話したい時も、対立関係になる時も、結局のところ日頃からどういう関係構築ができているかが鍵だと思います。日頃の感謝はこまめに伝える、ポジティブな会話をするという普段の積み重ねがあるからこそ、何かあった時も対等に話せるのかなと思います。
- ―最後に、Be myselfの読者にメッセージをお願いします!
- 千葉:キャリアを築いたり、周りの方と協働したりする上で、話し方はとても重要です。話すことに苦手意識を持っている方も多いですが、話し方は努力で変えられます。苦手だと感じている方は、たまたま話し方を習う機会やフィードバックを受ける機会がなかっただけ。スポーツや音楽などと同様に、しっかりと向き合うことができれば改善できますし、自分の強みにすることもできますよ。
【千葉佳織さんインタビュー】話し方が評価に直結する時代。良きリーダーのための話し方