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仕事に効く話

【三宅香帆さんインタビュー後編】自分に本当に必要な情報は“ノイズ”の中に

日本人の労働と読書の歴史をひもとき、現代の働き方の問題について提言した『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)が大ヒット中の、文芸評論家・三宅香帆さん。インタビュー前編では、とにかく忙しい日本人女性がこれからどのように働くべきなのか、そのヒントを伺いました。後編では、“ノイズ”と捉えられがちな「一見自分に必要なさそうな情報」こそ取り入れるべき理由や、取り入れ方をお聞きします。

 

前後編、後編です。前編記事はこちら

【三宅香帆さんインタビュー前編】全身全霊で働く社会の落とし穴

 

三宅香帆さんのイメージ画像

三宅香帆さん

文芸評論家。1994年生まれ。京都市立芸術大学非常勤講師。京都大学人間・環境学研究科博士前期課程修了。大学院在学中から文芸評論家として活動し、文学やエンタメなど幅広い分野で批評・解説を手掛ける。著書に『人生を狂わす名著50』(ライツ社)、『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』(角川文庫)ほか。

巡り巡って“ノイズ”こそ自分のためになる

―同じ読書でも、働きながらビジネス書を読む方は多いものの、小説や漫画といった娯楽で本を読んでいる方は少ない印象です。
三宅:ビジネス書や自己啓発本って、仕事の知識が得やすいモノですよね。一方で、今の自分にとっては必要が無いと思うものを“ノイズ”と感じてしまう人が増えている気がします。

自分に関係が無さそうな他人の話を長時間読む=ノイズを取り入れる余裕がない人が多いのかなと思いますね。

―ノイズを取り入れると、どのような利点があるのでしょうか?
三宅:自分が本当に知りたいことは、自分の知識からはなかなか知り得ません。自分の知らないこと=ノイズの中に、自分が本当に知りたいことの背景や本当に知りたかったことがあるのだと思います。だから、一見ノイズに感じることもそれを取り入れることで自分の知りたいことに繋がるはず。

例えば、仕事で成果を出したい時に、自分では営業の仕方が悪いと思ってビジネス書を開いていたとしても、実は業界理解が足りないのかもしれないし、他に勉強した方がいい分野があるのかもしれない。でもそれってノイズに触れないと気付けないことなんですよ。

無理して本を読む必要はない。まずは余裕を持つことから

―ノイズから離れてしまった人が、再びノイズを取り入れる方法はありますか?
三宅:やっぱり余裕を持つとか、自分でノイズを取り入れてみようと動いてみることでしか始まらないと思いますね。

疲れている時、余裕が無い時に無理矢理時間を割かなきゃ! と思う必要はありません。自分の中で余裕ができた時や「久しぶりに本を読もうかな」と思えたタイミングで良いと思います。その方が長い目で見ると、たくさん本を読むことができるので。

あとは読書に関しては、徐々に読める範囲や量が広がっていくものなので、最初は短い時間でちょっとずつ読んでいくと良いと思いますよ。

ー働きながら本を読むコツも教えてください!
三宅:iPadを買うことはオススメです。文字も大きく画面も光るので、通勤中や自宅で寝転がりながらなど、紙媒体よりもスキマ時間に読みやすいと感じます。ちなみに読書用iPadにはSNSアプリは入れないこと。通知が来ると読書が中断されてしまうので。

あとは、帰宅途中にカフェやファストフード店に寄って読書することを習慣化してみるとか。食べたり飲んだりしながら本を読むことは癒しの時間になりますよ。この時間・場所では読書をする、と自分で区切りをつけるのも良いかもしれませんね。

また、書店にふらっと寄ってみるのも読書する気分が上がるものです。目的がなくても近所の書店になんとなく立ち寄ってみると、本が読みたくなると思いますよ。

―久しぶりにビジネス書以外の本を読もうとすると、何を読むか迷ってしまいます。選び方のコツはありますか?
三宅:昔好きだった作家さんがいらっしゃる方は、その方の最新刊やその方の影響を受けた作家さんの本だと好みが似ているのでオススメです。

好きだった作家さんが思い当たらない方は、SNSやブログで自分と年齢や考え方が合いそうな読書アカウントを見つけてみると良いですよ。そういった方が面白いと評価した本は自分に合う可能性が高いので。

―管理職女性や、管理職を目指している女性にオススメの書籍も教えてください。
三宅:『女の国会』(幻冬舎・新川帆立)という小説です。国会議員や秘書、記者など国会で働く女性たちの群像ミステリーで、とても面白いです。人からは見えない働く女性の苦労やなかなか理解してもらえない大変さを描いているので、様々な立場の女性に読んでいただきたいですね。

あとは、小説に慣れていなくて読みづらいのならノンフィクション作品も面白いですよ。東京2020五輪で起きた炎上騒動を取り扱った『小山田圭吾炎上の「嘘」』(文藝春秋・中原一歩)は、最近読んで面白かった本です。本人をはじめ様々な関係者に聞いた話を書いているので、多角的に物事を読み取れる一作でした。

―最後に、Be myself読者である30代、40代の働く女性にメッセージをお願いします。
三宅:30代、40代は大変な思いをしながら働いている人も多いと思います。基本的には本を読むことは趣味の一環なので、余裕がある時に楽しめば良い。余裕がある時にちょっとずつ本を読んでいると、良い趣味の一つになると思いますよ。興味が出た時に書店に足を運んでもらえたら嬉しいです。
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