ペーシングとは?信頼関係をつくるコミュニケーションスキルを解説
「ペーシング」はコミュニケーションスキルの一つで、相手の警戒心を解いたり、円滑なコミュニケーションを取ったりするために有効な方法です。
この記事では、ペーシングの実践方法や注意点などを詳しく解説していきます。
目次
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ペーシングとは
ペーシングとは、相手のペースに合わせて会話を行うことで、相手の警戒心を解き、信頼関係を構築するコミュニケーションスキルの一つです。
話す速度や話し方、声の大きさや高さ、感情の起伏などを相手に合わせ、話をしている相手との間に一体感を生み出し、会話をするのに心地よい空間を形成していきます。
ペーシングの目的はラポール形成であると言われています。ラポール形成とは、相手と信頼関係が築けている状態を指します。ペーシングは、「この人とは気が合いそうだ」「話をしていると落ち着く」といった深層心理での信頼獲得を目的とします。
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管理職とメンバーの信頼関係構築のポイント
※医療用語にも「ペーシング」という用語は存在しますが、こちらはペースメーカーによる治療方法の一つを指し、意味は異なります。
ぺーシングを実践するポイント
前述した通り、ペーシングは深層心理での信頼関係を築くためのコミュニケーションスキルです。ペーシングのメリットは、その時点で深く相手を知らなくても、目や耳から受容できる情報だけで実践が可能なことでしょう。
ペーシングでは相手と会話のテンポを合わせるために、相手の状態をよく見ることが重要です。具体的にペーシングを実施する際に、注目すべきポイントについて解説します。
声音や話すスピード
まず分かりやすいのは声の音量やトーン、話すスピードです。
想像してみてください。もしあなたが早口で話すタイプなら、相手の話すスピードがゆっくりだとイライラすることはありませんか?その逆であれば、相手の話の速さに気圧されるのではないでしょうか。
声のトーンや音量、話すスピードが合う相手とはどこか話しやすい気がしますよね。また会話の内容によって、相手の声音や話すスピードは変わることもありますので、その時に応じて自分も合わせていくことが大切です。
表情やジェスチャー
ペーシングでは、表情や身振り手振りを相手に合わせていく手法もあります。
とはいえ、全く同じジェスチャーをすると「馬鹿にされているのではないか」と相手が感じることもあるため、あくまで自然に真似ることが大切です。ジェスチャーは相手が真似をされていると感じさせないように、少しタイミングをずらしたり、一部だけ真似をしたりするとよいでしょう。
また表情もとても重要です。喜んでいる時は一緒に笑ってくれると嬉しい気持ちになりますし、悲しい時は同じように悲しい表情をしてくれると寄り添ってくれる心地がするものです。相手の感情の起伏に合わせる時には、表情がとても重要なポイントになります。
呼吸
ペーシングが上手な人は相手と呼吸を合わせるのが得意です。呼吸とは間の取り方であり、同じリズムで呼吸を行うことです。
呼吸を合わせるのは難易度が高いので、まずは相手の胸の動きを注視して相手の呼吸のリズムを観察することから始めてみましょう。慣れてきたら相手と呼吸のリズムを合わせていきます。
ペーシングの利用場面
では、ペーシングが有効な場面とはどのような場面でしょうか。利用場面をいくつかご紹介します。
部下の育成
まず一つ目は、部下の育成の場面です。部下のモチベーション向上や生産性を上げるためには、上司との信頼関係が重要なポイントです。信頼関係を築くためには相手のことを知る必要がありますし、また知るためには自分のことを話してもらわなくてはいけません。
1on1ミーティングや定例会議の際にペーシングを用いれば、部下が安心できる雰囲気がつくれ、リラックスして話してもらうことができるでしょう。
部下の指導についてはぜひこちらの記事もご参考ください。
部下の指導で大切なポイントとは?タイプ別の指導法も
営業
二つ目は営業の場面です。
初対面では、営業とクライアントの間には心理的距離があることがほとんどです。また、クライアントは営業に対して警戒心や緊張感を持っている場合が多いですよね。この心理的障壁を取り払うためには、相手が話しやすい環境を作る必要があり、その点でペーシングは効果的でしょう。
特に新規営業の場合は、前段階のアイスブレイクなどの間にペーシングによって、話しやすい空気を醸成できるとよいでしょう。
採用面接
採用面接では、短い時間で自社で活躍できる人材を見つける必要があります。面接で来た初対面の人に対し、どのような人柄なのか、会社で活躍できる人材なのか、その判断材料を引き出さなくてはいけません。
そのために、ペーシングを用いることで短い時間でリラックスできる環境を醸成することが大切です。
ペーシングを実施するときの注意点
ペーシングはあくまで相手との信頼関係を築くことが目的であり、相手を誘導することが目的ではありません。
・相手をコントロールしようとしない
・会話をリードしようとしない
・相手の言葉を否定しない
ペーシングを実施する時は、これらの事柄に注意して、相手が心地よく話せる空気になることを意識して行いましょう。
ペーシングに利用できるスキル
最後にペーシングに利用できる、信頼関係を築くために有用なスキルをいくつかご紹介します。
ミラーリング
ミラーリングは相手の動作を鏡写しのように真似ることです。仕草やジェスチャー、表情などを指します。全く同じタイミングで行うと真似をしていると悪印象を抱かれる恐れがあるので、あくまで自然に行うことがポイントです。
バックトラッキング
バックトラッキングとは、相手の発した言葉を繰り返すコミュニケーションスキルの一つを指します。日本語で「オウム返し」を意味します。
相手の言葉を丸ごと繰り返すのではなく、一部を繰り返すだけでも問題ありません。「今日から寒くなりましたね」という言葉に対して「寒くなりましたね」と返す、といった具合です。「あなたの話をきちんと聞いている」「あなたの話に関心を持っている」と思ってもらえるでしょう。
キャリブレーション
キャリブレーションは、相手の仕草や表情、声音などの非言語による情報から、相手の心情を読み解くスキルです。
次のようなことに注目して、相手の心理状態を推察します。
・表情や声音
・話すスピードや声の大きさ
・呼吸の速さ
・瞬きの回数
・身振り手振り
例えば、いつもと比べて話すスピードが早い、声が大きい場合などは、相手がその話題に興味があることを示しています。そういった時には、先の提案までするのも良いでしょう。
逆に声が小さかったり、目が合わなかったりする場合は、乗り気でないことや疲れている・落ち込んでいる可能性も。そういった時は自分の話をやめて相手の話を聞くことに集中しても良いかもしれません。
大切なのは先入観を捨てて、今の状態の相手の様子をフラットに観察することです。
まとめ:ペーシングを利用して信頼関係を構築しよう
ペーシングは相手のことを深く知らなくても、すぐに実践できるコミュニケーションスキルです。意識して使うことで、相手とより早く信頼関係を築くことができるでしょう。