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女子バスケ日本代表・髙田真希さんに聞く① 人前に出ることが苦手でも、トップリーダーになれたワケ

バスケットボール女子日本代表の髙田真希さん。 2021年の東京オリンピックではキャプテンとして、日本女子バスケットボール史上初の銀メダルへと導きました。さらに現役トップアスリートながら、2020年には自身が代表を務める株式会社TRUE HOPEを立ち上げた“アスリート社長”でもあります。
デュアルキャリアを歩みながら、リーダーとして、チームを会社を引っ張る髙田さんに、リーダー論、キャリア論を伺う特別インタビューです。

 

<プロフィール>

髙田 真希(たかだ まき)/女子バスケットボール選手

1989年、愛知県生まれ。デンソーアイリス所属。女子バスケットボール日本代表 副キャプテン。東京オリンピックでは日本代表キャプテンとして、銀メダル獲得に貢献。2020年、現役選手を継続しながら、イベント企画・運営会社の株式会社TRUE HOPEを設立、社長に就任。地域活性×バスケイベント「髙田真希マルシェ」や、バスケ最強の1on1を決めるイベント「CLASH BEAT」などを主宰。

リーダーは先頭に立って行動し、道を作る立場

―日本女子バスケットボール代表でキャプテンを経験されている髙田さん。リーダーとして心がけていることを教えてください。
髙田真希さん(以下、髙田):大切にしているのは、先頭に立って行動し、道を作ることです。やはりリーダーは、どういった道標を作っていくかがとても大切。

スポーツは、目標に向かう中で厳しい練習やトレーニングも乗り越えていかなければなりません。目の前のことだけを考えるととても辛いですし、大変なことの連続ですが、その先には目標達成というゴールがあります。リーダーが目標をぶらさずに先頭に立って行動しないと、後についてくるメンバーはどの方向に努力すればいいのかわからなくなる時が来ます。

だからこそ、メンバーとのコミュニケーションもとても大切だと思っています。目標に対して自分が感じていることや、普段の練習の中で思ったことをメンバーには言葉で伝えるようにしています。

―日本代表では最年長ですが、年齢差があるメンバーとのコミュニケーションで意識していることはありますか?
髙田:年齢差がある選手としては、私に対して話しかけづらいと感じる場面もあると思います。だからと言ってこちらからものすごく喋りかけるわけではないですが、目配りは心がけています。

私が若い選手をイチから全て導いてしまうと、その人のためにはなりません。まず自分が先頭にあって行動に移し、基本的には背中で見せる。そして目配りしながら、「困ってそうだな」「上手くいってなさそうだな」というタイミングで声をかけたり、手を差し伸べたりして、一緒に答えを導き出すようにしています。

―現在は日本代表の副キャプテンですが、キャプテンの立場とリーダーシップの取り方に違いはあるのでしょうか?
髙田:やることは基本的に変わらないです。目標を達成するために自分がまず行動で示すこととコミュニケーションを大切にすること。ただ、まずはキャプテンがしっかりチームをまとめられるように引き立てつつ、自分が感じたこと、やらなければならないことをやるようにしています。
―後輩選手の指導で悩んだり、コミュニケーションがうまくいかなかったりした経験はありますか?
髙田:本来、リーダーは手取り足取り教えるべきではないと思っています。ですがかつて、イチから全てを教えてしまい、選手のパフォーマンスを伸ばせず「自分がこれだけ教えたのに何故やってくれないんだろう」という気持ちになったこともありますね。そうなるとプレー中も自分のパフォーマンスも上手く発揮できなくなるんですよ。

私自身も経験があるのですが、選手の上司であるヘッドコーチが何を求め、何を望んでいるのかを理解できずにつまずく時は誰だってあります。そんなメンバーを成長させるためには、まずリーダーは困っている選手がいないか常に気にして、気付いてあげることが大切です。そして「どうしたらいいのか」と聞かれたら手を差し伸べる。困ってもいないのに何でも教えるのではなく、本当に困っているメンバーに対して惜しみなく教えるようにしています。

―代表チームと所属チームで、リーダーシップの取り方に違いはありますか?
髙田:基本的に違いはないです。いま所属チームではリーダーの立場ではないのですが、それでも行動に移していく姿勢は変わりません。

ただ日本代表とは異なり、所属チームだと選手間のスキル差が出てくることが多いんですよね。だからこそより目配りも大切にしています。調子が悪い選手やミスした選手に対して強い言葉を使うのではなく、「じゃあ次こうしてみよう」「切り替えていこう」と、なるべくポジティブな声掛けを意識しています。

目標が明確ならば、失敗もステップアップに活かせる

―落ち込んだ時、どのようにメンタルを立て直していますか?
髙田:目標を明確にし、そこに立ち返ることです。スポーツは上手く行かないことがほとんど。だからこそ、目標があることで「次はこうしてみよう」と行動に移すことができるのです。

目標があれば、失敗さえもヒントとなり、悩んでいる暇がなくなるくらい「あれやってみよう」「これやってみよう」と思えます。失敗を失敗と捉えるのではなく、経験として捉えられると、自分自身もどんどんアップデートされていきます

私も今思えば、これまでの人生、上手くいかなかったことばかりです。表に出るのは良い結果だけですが、苦労ばかりでした。例えば、東京オリンピックで銀メダルはとれましたが、その前にはオリンピックに行けなかった悔しさもあるし、メダルに届かなかった悔しさも経験しています。

でも、目標があったからこそ続けられたし、いい結果が生まれた。もちろん途中で「辞めたい」「無理だ」と思うこともありましたが、続けたからこそ辿り着けたのです。

目標に辿り着けるまでの期間が1年の人もいれば私のように10年単位の人もいます。たとえすぐに結果に繋がらなくても、目標をもってやり続けることが大切なのです。やってきた過程は自分の財産になるので。

―では、髙田さんの今の目標とは?
髙田:「もっと上手くなる」ということです。「上手くなりたい」という気持ちがあれば、練習するしかないですし、失敗してもそれを経験と捉え、次のステップに進んでいくしかありません。

逆に「上手くなりたい」という気持ちがなければ、「自分はこのくらいでいい」「自分はこれしかできない」と思ってしまい、行動にも移せなくなります。

―トップアスリートの髙田さんでも、「上手くなる」が目標なのですね!
髙田:東京オリンピックの時にヘッドコーチを務めたトム・ホーバスコーチが、「上手くなりたい」という気持ちをすごく大切にしている方だったからこそ初心に帰れたのだと思います。チーム最年長の私に対しても「何歳でも向上心を持つことがすごく大切」とずっと言い続けてくれました

正直、それまでは私も、「このくらいのプレーでいいかな」と思っていた時期もありました。年を重ねていくと、自分の限界値を知ってしまった気がする時が来ます。でも「自分のレベルはこれくらい」と決めつけてしまうことで、勝手に自分の成長をストップさせてしまっているのです。

トムコーチと一緒に戦ったことで、「今日は昨日より上手くなりたい」という気持ちが強くなり、自分の世界も広がりました。特に女性は、34歳だとすでに現役引退している選手も多いのですが、私は「上手くなりたい」という気持ちがなくなった時が、引退する時だと思っています。

最初からリーダーシップが取れたわけではない。けれど、上手くいかないことがダメではない。

―髙田さんはどのようにしてリーダーシップを養ってきたのでしょうか? 元々人の前に立つことが得意なタイプでしたか?
髙田:いや、元々は表に立つことがとても嫌いな人見知りでしたし、リーダーとして引っ張ることもすごく苦手でした。学生時代はキャプテン・副キャプテンの経験もありません。

所属チームでキャプテンを1年間経験して、その翌年の2018年に日本代表としてキャプテンになったのですが、表に出なければならない場面が多くなり、自分の中で試行錯誤しながら今のスタイルに辿り着いた感じですね。

ただ、キャプテン就任当時からチームの目標達成に向かって出し惜しみはしたくないと感じていました。自分の思いを言葉にすることが苦手なタイプでしたが、チームが勝つため、優勝するためにはそこもしっかり言葉にして伝えなければなと。それでもし上手くいかなくても自分を出し切れたのならば、別に後悔はないと感じていました。

―会社員でも「自分はリーダーに向いていない」と感じている方もいるので、とても勇気が出るお言葉です。
髙田:最初は何をやっても上手くいかないことがほとんどだと思います。それも経験ですし、上手くいかない=ダメではありません。その経験からステップアップしていくものです。それこそ私も、トムコーチからリーダーとして注意されることもたくさんありました。その中から学びがあって、自分なりのリーダーシップの取り方が生まれて、今があります。



→後日公開の「後編」に続きます。

 

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