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仕事に効く話

(後編)『リーダーの仮面』安藤広大氏に聞く、
チームの生産性を上げるマネジメント術

いざ管理職になっても、チームをどうマネジメントしていいのか正解がわからない。そんな管理職の方向けに、ベストセラー『リーダーの仮面』著者の安藤広大さんが管理職・マネジメントの心得を解説!後編では、チームの生産性を上げるために管理職が具体的にすべきことをお聞きしました。※前後編、後編です。

※前編はこちら。

 

<安藤広大さんプロフィール>

株式会社識学 代表取締役社長。組織マネジメントの専門家。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス(現:ライク)のジェイコム株式会社で取締役営業副本部長等を歴任。2015年、株式会社識学を設立。業績アップの成果が口コミ等で広がり、導入実績は3500社超に。著書に29万部を突破したベストセラー『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)など。

組織のルールを決めることで、メンバーが自由に働ける

―前編ではリーダーとはどうあるべきかの心得を教えていただきました。では、リーダーの役割を果たすための具体的なマネジメント術について教えてください。
安藤広大さん(以下、安藤):まずは「位置」を理解し、「ルール」を制定する。そして「結果」で評価することです。
「位置」を理解するとは、上下の関係をはっきりしておくということです。日本の多くの会社で足りていない部分でもありますが、上司と部下の上下関係は、単なる役割であると認識してください。上司の方が部下よりも偉いわけでも、仕事ができるわけでもありません。仕事の責任を負っている役割である上司が、プレーヤーという役割の部下に指示を出し、評価をしているのが正しい位置関係です。

―たしかに、上司と部下の上下関係を正しく理解できていないパターンも多そうです。
安藤:「上司の方が理解できておらず「自分が偉い」と勘違いしていると、部下を押さえつけようとしてパワハラも起こりやすくなります。そもそも上司が偉そうにする必要はないのです。

―正しい位置関係をメンバー全員が把握していることが、マネジメントの前提になるのですね。
安藤:そういうことです。その上で、上司ははじめに組織内のルールを制定する必要があります。なぜなら誰しも異なる人生を歩んでいる以上、どんな組織でもメンバー間での認識のズレは必ず起きるからです。そしてそのズレは部下側のストレスとなるのです。

―制定すべきルールとは、どのようなものでしょうか?
安藤:「できる・できない」が存在しないような、メンバー全員が守ることができるルールです。たとえば、「日報を17時までに出す」「会議には遅れない」といったような。こういったルールが明確でないと部下は上司の顔色をうかがうことになりますし、メンバー間でも何が正しい行動かわからず混乱が起きます。ルールがあることで組織に摩擦が起きず、一体感も生まれるのです。ルールがあるからこそ、その中で自由に働けるのです。

部下の成長を妨げる、プロセス評価の落とし穴

―では、なぜ「結果」で評価することが必要なのでしょうか?
安藤:プロセスで評価してしまうと、部下の「プロセスの見せ方」が上手くなってしまうだけで、結果的に生産性が低いメンバーになってしまいます。また、他の部署や会社でも通用しない人間になってしまい、部下のためにもならないのです。
ちなみに、女性活躍が進まない根本原因も、多くの管理職が行なっている「プロセス評価」にあると思っています。長時間労働や上司と多くの時間を過ごしたこと、上司にアピールできた人間が評価されてしまっては、時短勤務の方は適正に評価がされませんよね。

―おっしゃる通りだと思います。昨今はリモートワークでのマネジメントに悩む管理職も多いですが、結果で評価していれば、リモートワークでもうまく組織運営ができそうです。
安藤:むしろプロセスを評価できなくて余計な感情も生まれないリモートワークこそ、マネジメントの理想的な環境だと思います。

また、リモートワークに限らず結果でしか評価できない状況では、目標設定が重要になってきます。今週はどこまで何をやり切るかを設定していれば、本来その1週間は上司からアクションを起こす必要もないのです。部下が困っているならば部下の方から上司に相談すればいいのです。

ー営業職など明確な数字がある組織なら結果も明確ですが、事務職などは何を成果とすれば良いのでしょうか?
安藤:たしかに難しいですよね。でも、タスクを定量化する工夫はできるはずです。例えば私たちの組織では、総務部の方のルーティーンワークをポイント化しています。そしてプラスアルファの提案を上司に承認してもらい実行できたら追加ポイントが付く仕組みです。なので、ポイントを多く稼ごうとしたらいち早くルーティーンワークを完了させ、プラスアルファの提案に時間を割く必要があるのです。これにより、組織としての生産性も高まりますよね。

上司&部下からの反発の乗り越え方とは

―これまでとは全く異なるマネジメントを取り入れることに、さらに上の立場の管理職からの反発もあるかと思います。受け入れてもらうためにできることはありますか?
安藤:先に責任を宣言して、結果で正しさを証明するしかないと思います。組織運営の権限をもらった時に「○年以内にこういった組織でこれだけの成果を上げます。なので、まずは私のやり方でマネジメントをしても良いですか」と宣言することです。そこできちんと結果が出せれば、自分のやり方が正しかったと上司にも思ってもらえます。

―なるほど。では、部下が反発して辞めてしまうのではないかという不安に対しては、できる対策はありますか?
安藤:部下が自律的にキャリアを歩むことも大切なので、会社辞めること自体は仕方がないことですが、上司側が反省するとしたら「迷わせてしまった」という点です。どう頑張ればいいかわからない。どこに向かえばいいかわからない時が一番のストレスになります。つまり、ルールも目標も曖昧だったということ。部下が堂々と頑張れない状況だけは作ってはいけないと思います。

「良いリーダー」には、誰だってなれる

―最後に、現在マネジメントに悩んでいる管理職や、これから管理職を目指す方に向けてエールをいただけますか?
安藤:組織でのリーダーは初めてでも、これまでの人間関係で人をリードする瞬間は少なからず経験しているはずです。例えば友人と食事に行く店を決めたり、家事の段取りを決めて、家族に指示をしたり。つまり、これらの経験は組織の上下関係に置き換えれば一人の部下を持つことと同じです。本来、リーダーは誰しもできるはずなのです。必要以上に自信を失くすことはありません。

―とても勇気が出るアドバイス、ありがとうございました!
安藤:「人間的に優れていないとリーダーはできない」「部下が働きやすいようマネジメントしなくては」と、思うあまりリーダーの仕事が複雑化してしまっている点は、多くの企業が抱える問題点だと思います。リーダーの仕事をとにかく削ぎ落とし、誰でも守れるルールと結果で管理するシンプルな仕組みをつくり、実行していればうまくいくはずです。リーダーになり、部下が成長して自分では成し遂げられなかったようなことをチームで達成した時、これまでとは比べものにならない大きな喜びがありますよ!
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