『「選んだのは自分」と納得できる意思決定が大切』
住友生命保険 国際業務部 奥村三沙子さん【前編】
誰しも迷うキャリアの決断。管理職として活躍する女性はいつ、何に悩み、どう決断してきたのか。キャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。
今回は、住友生命保険相互会社で国際業務部タスクフォースマネージャーを務める奥村 三沙子さんにお話を伺いました。
奥村 三沙子(おくむら みさこ)さん
住友生命保険相互会社
国際業務部 タスクフォースマネージャー
大学卒業後、1999年に住友生命保険相互会社に新卒入社。
入社後は一貫して資産運用部門でキャリアを重ね、2017年に総合キャリア職へ職種変更、2018年にALM証券運用部資金債券運用室担当室長に就任。2022年には国際業務部国際業務室担当室長に就任し、2023年から現職。
毎年一つは資格を取得すると自分に課して、知識を増やしていった
- 国際業務部タスクフォースマネージャーとして、海外人事異動に伴う労務や税務管理などを担当している奥村三沙子さん。2024年にはシンガポールの保険会社を子会社化するなど住友生命保険相互会社では海外事業の拡大が進んでおり、サポートする海外駐在員とその家族は100名を超えています。奥村さんは12人のメンバーマネジメントを担いながら、タスクフォースとしてシンガポール駐在員事務所の設立・維持や事務体制面の効率化に注力しています。
奥村さんが住友生命保険相互会社に入社したのは、大学卒業後の1999年。一般職(現・ビジネスキャリア職)で入社後、資産運用部門でキャリアを重ねたのちの2017年に総合キャリア職へ職種変更をしています。一方で、入社当時は就職氷河期の真っただ中であり、長期的なキャリアを描いていたわけではありませんでした。 - 「当時はまだまだ、女性が長く働くことが当たり前の時代ではありませんでした。就職氷河期で選択肢も限られていましたが、金融機関の一般職の採用の門戸は比較的開かれていたんです。大学ではドイツ文学を学んでいて、金融とはまったく関係のない分野。でも事務職であれば私でもできるかな…と、不安と期待が入り混じった気持ちで入社を決めました」
- 入社すると、資産運用部門の資金決済を行う部署に配属されます。お客さまからお預かりした保険料を、将来の保険金のお支払いに向けて確実に運用していくのがミッションです。中でも、奥村さんが担当したのは、1年以内の短期運用と呼ばれる取引のバックオフィス業務でした。
- 「仕事を始めてみたら、資産運用の世界の奥深さにのめり込んでいきました。日々の短期運用の取引金額は数千億円規模でした。1日の中でも朝一番に取引するか、お昼にするかで金利が異なり、毎日の収益が数字で目に見えてわかるので仕事のモチベーションになっていましたね。バックオフィス業務に慣れてくると、フロントのトレーダーとして金融機関同士の取引を担当するようになりました。より良い条件で取引を行うためにバックオフィスを担当していたときに身につけた決済制度の知識が役に立ったほか、日本はもとより海外の金融政策について深く探求するようになりました。
取引の際には、一般職か総合職かという肩書は関係ありません。同じ市場の参加者として、対等にレート交渉できる知識をつけておかなければ、という緊張感もありました」
- もともと、興味を持った分野について徹底して調べ、学ぶことが好きだった奥村さん。加えて、住友生命保険相互会社では、入社当時から自己研鑽していく風土が根付いていたといいます。
- 「入社してからもう25年経ちますが、毎年何かしら資格を取得する、ということを自分に課してきました。生命保険の分野には、生命保険を販売するための必須資格をはじめさまざまな難易度の資格がたくさんあります。継続することは決して簡単なことではありませんが、毎年小さな達成感があって、1年前より成長できたと思えるんです。それが私にとって心地いい状態だったから、今まで続けてこられたのかもしれません」
新たなプロジェクトで社長賞を受賞 、次なる挑戦として職種変更を決めた
- 大きなキャリアの転換は、総合キャリア職への職種変更を決めた2017年。きっかけは、新たな運用スキーム構築のプロジェクトでメイン担当になったことでした。
- 「2016年に、住友生命が保有する約20兆円の有価証券を活用して、外貨を資金調達する新たな取り組みが動き出しました。当時の上司が、私をそのプロジェクトのメイン担当としてアサインしてくれたんです。プロジェクトメンバーと協業することで組織として最大限の力を発揮していく、その面白さを味わったことで、『こんな仕事をまた手掛けたい』と思うようになりました。上司はメンバー一人ひとりの強みや可能性を見極めながら、誰にどんな仕事を任せればその人の成長につながるのかを考えて動いていました。一緒に伴走しつつも、任せてくれる。そんな寄り添い方が心強くて、私もいずれはこんな管理職を目指したい、そのために総合キャリア職に挑戦しようと、気持ちが固まっていきました」
- 当時はすでに、一般職の制度内での昇給・昇格を目指すべきところまで到達していたこともあり、もっと業務内容や責務の大きさに見合うポジションや報酬がほしい、という気持ちもあったといいます。
- 「キャリアに対して停滞感が出てくると、周りの人や環境に対して、羨ましさを感じるようになってしまって…。それまでは、目の前の仕事と自分自身の成長に対してコツコツと努力を続けられてきたのに、『あの人はいいな』と思ってしまう。そんな思考は健全ではないなと気づいたんです。また、外貨の資金調達のプロジェクトでは社長賞をいただき、やり切ったという達成感もありました。長く今の会社で働くことを考えたら、一つの領域だけを極めるのではなく、部署異動を伴う総合キャリア職で自分の可能性を広げていったほうがいいのではないかと考えたんです」
→後日公開の「後編記事」につづきます
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写真:MIKAGE
取材・執筆:田中 瑠子