女性リーダーのための仕事のコミュニケーション術
前回記事では女性のキャリアアップの課題と、頑張りすぎないでうまくいく考え方についてお伝えしました。
第2回目の連載は、「女性リーダーのための仕事のコミュニケーション術」についてお話します。
けーりん(唐仁原けいこ)さん
・株式会社ライフキャリアcircle代表取締役
1980年生まれ、長野県在住、3児の母。コロナ禍で書き始めたブログが話題になり『主婦業9割削減宣言』(中央公論新社)として書籍化。”女性が主体的に生きる”をテーマにしたオンラインコミュニティが人気を博し、フリーランスから法人化したところ2年で年商5億円の会社に成長。組織拡大の要であり重要な役割は「橋渡し=ブリッジ(Bridge)」のポジションであることを見出し、言語化して発信。2024年8月、『戦略的いい人残念ないい人の考え方』(すばる舎)出版
仕事のコミュニケーションのコツは頼り、相談すること
仕事で成果を出す女性、いわゆる「仕事ができる女性」は、総じて、“自分の意見”をしっかりと持っている傾向があります。しかしそれゆえに、周囲にストレートに意見を伝えすぎて対立を起こしたり、何気ない意見を述べたつもりが価値観の違いに戸惑ったりする場面も少なくないのではないでしょうか。
私が仕事のコミュニケーションを取るうえで意識しているのは、
・協力を得るために、とにかく”頼る”こと
・指示を出すのではなく相談すること
の二点です。
「自分は人の役に立っている」と実感したときに強い喜びを感じる人は殊の外多いように感じます。そのため、気持ちよく動いてもらうために、頼ったり、お願いしたりすることが有効です。
例えば、「この部分をお願いしたいです」、「この部分がうまくできないので手伝ってもらえませんか」など、業務の一部分を具体的に相手に頼ると効果的です。
そのうえで、相手が動いてくれたことに対し、「本当に助かりました!」、「すごい、もう対応してくださったんですか」など、感謝の言葉や喜びをオーバーリアクションなくらい表現すること。喜びや感謝の気持ちを伝えることで、相手は“役に立った“という実感が得られ、”もっと力を貸したくなる”という循環に入ります。
人によっては、相手の細かい感情や反応に気づきづらい人もいます。だからこそ、喜んでいることを”わかりやすく”伝えて行きましょう。
実際、皆さんも、仕事をしたときに相手が分かりやすく喜んでくれると、嬉しいですよね。
一方で、仕事ができる女性にありがちなのは、気が付くと、何でも自分でやってしまい、周りの人が力を貸すスキがないという状態です。
これでは、相談し合う関係や、助け合う関係がなかなか生まれません。
あえてお願いしてみる、助けの手が出しやすい場面を作ることで、周囲のやる気も変わってくると感じています。
部下とのコミュニケーションのコツ
(1)部下との関係でも、周囲に頼り・相談することが重要
部下との関係でも、大切なのは「指示命令で人を動かそうとしないこと」、「頼れるところを頼ること」です。
意見を求められることで、部下に当事者意識が芽生え、アイディアが出て来やすくなりますし、プロジェクトに主体的に関わる姿勢が生まれます。
加えて、頼られることで、「自分は人の役に立っている」との実感が増し、やりがいを感じることができます。
ちなみに、部下との関係では、「部下を注意したいけど、部下が言うことを聞いてくれない・・・」という悩みを持つ場面もあると思います。その場合も、上述したように、周りに頼り・相談することが突破口となります。
例えば、自分の上司や別の管理職の力を借りることでスムーズに問題が解決することがあります。自分が注意したいことをあえて直接言わないでその部下が尊敬している管理職を通して伝えてもらう。
最終的な目的に辿りつけるのであれば、伝えるのは自分でなくてもよいのです。
直属の上司や親、配偶者など身近な人の言葉ほど受け入れにくくなる人は少なくありません。
だから、「相手が受け取りやすい人から伝えること」を心がけるだけで、人間関係は驚くほどスムーズになり、たくさんの協力を得られる体制を築くことができます。
”その相手は誰の話なら受け取りやすいか”を考えること、すなわち、『橋渡しの視点(Bridge)』を持つことで、より円滑に仕事を進めることができるようになるでしょう。
また、『橋渡しの視点(Bridge)』を持つことは、コミュニケーションを上司と部下という閉じた関係から、同僚や先輩、違う部署の管理職などを巻き込んだ関係に拡張し、部下に逃げ場を作る効果も期待できます。
なお、この『橋渡しの視点(Bridge)』を実行に移し活用するためには、周囲との人間関係作りが重要になります。日ごろから他の管理職などと良好な横の繋がりを築いておくことが大切です。
(2)女性部下との関係づくりで意識したいこと
部下が女性の場合、関係づくりで特に注意すべき点があります。30代・40代の女性の中には結婚・出産等のライフイベントで家庭環境が大きく変わる人が少なくありません。その変化を乗り越え、あるいは、その変化による苦悩を抱えながら仕事をしている人も多い状況です。
仕事、家事、子育て、親戚などのお付き合い・・・たくさんの関わりの中で生きている女性部下に対し、「家庭とのバランスで無理していないですか」などの声掛けを適宜行えると、女性部下が悩みを一人で抱え込んでしまう事態を回避しやすくなります。
また、例えば、学年が変わるタイミングなどは、子どもが情緒不安定にもなりやすい時期の一つです。その不安定さは、ときに長く続くこともあります。
だから、部下とのコミュニケーションの中で、子どもの学校イベント・ライフイベントなどに配慮した言葉掛けができると、管理職に対する安心感や信頼感が生まれ、協力体制を築きやすくなります。
もう一点、女性部下と接するうえで気を付けたいのは、「大変そうだから、仕事を少なくしてあげよう」とか、「早く帰れる方がいいんじゃないか」という決めつけをしないことです。
部下の置かれている状態は日々変わり、その時々で部下の持つ時間的・精神的ゆとりは異なります。つい最近までは悩んでいなかったけど、今は違う・・・ということもあります。
だから、まずは、部下のキャリア観として「どういう働き方を理想としているのか」を把握しておくことが重要です。この問いかけを行うことで、部下が自分の現状や想いに気づくきっかけになりますし、理想の働き方が整理されることで、本人のパフォーマンスが上がることも望めます。
家庭の状況や働く心境の変化について、折に触れて話せる、そんな関係性が築けているかどうかで、チームワークの良さも変わってくると思います。
このように、女性が活躍し続ける社会を作るためには、周囲との協力が不可欠です。「戦うのではなく協力を得る」、「お互いが違いを尊重し役割を全うする」、そんな関係を上司や部下・同僚と築けるよう、ぜひ取り組んでみてください。
次回は、「女性リーダーによる“成功するチームの育成法”」について書いていきます。
・けーりん(唐仁原けいこ)HP
・「戦略的いい人残念ないい人の考え方(すばる舎)」