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仕事に効く話

小島慶子さん「親が人生を楽しむ姿を見せることは、子どもにも良い教育になる」

キャリアや仕事、人間関係、健康、家族、恋愛…。悩み多き現代女性たちに寄り添う人気企画「お悩み相談室」。今回の回答者はエッセイスト、メディアパーソナリティとして活躍する小島慶子さん。上手にプライベートを充実させる方法について、小島さんが答えます。

前編はこちら
小島慶子さん「必要な時に適切な人に頼れるリーダーは、メンバーから信頼される」

 

小島慶子さんのイメージ画像

小島慶子さん

エッセイスト/メディアパーソナリティ/昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員
1995年~TBSアナウンサーとしてテレビ、ラジオに出演。2010年独立。2014~23年にはオーストラリアとの二拠点家族生活を実施。息子たちの海外大学進学を機に、2024年からは日本に定住。

人生後半、やりたいことの見つけ方


(40代・サービス業)

定時で帰れる職場で働いている事務職です。これまで家庭を優先しながら働いてきました。子どもが高校生になり、少し手が離れた今、時間にも心にも余裕があります。良いことなのですが、これといった趣味もなく「私はこれから何を楽しみに生きていくんだろう」と虚しい感覚すらもあります。

人生後半の楽しみや意義を、どう見出せばよいと思いますか?



小島さんの回答「わからない世界にあえて飛び込んでみて」

40代は心にスースーとした風が吹く時期なんです。ホルモンバランスの変化や子どもとの距離が離れていくことで寂しい気持ちになるのは自然なことです。
その上で大切なのは、子どもの手を上手に離すこと。寂しいからと離れていく子どもの手を掴みたくなってしまいますが、それは子どもの健全な成長を妨げることになってしまいます。楽しみはそのうち見つかるので、子どもに執着しないことをまずは心がけてください。
そして、やりたいことを見つけるためには「わからない物事がわかるようになることは楽しい」という感覚を思い出すこと。
私の場合、美術が好きなのですが「書」の良さだけがどうしてもわからなくて。美術展に行っても書のコーナーは素通りしていました。でもある時に、「わからないものをちょっとわかってみたい」と思ったんです。中年になると、わからないものを知る経験自体が少なくなってくるので。
そこで書の先生をInstagramで探しました。素敵な作品を載せている書家の方の個展を見に行って小さな作品を購入。しかも在廊していた先生がとても親切で。それをきっかけに、お教室にも行ってみることにしたんです。とりあえず通ってみたら、すごく面白くて。今では美術展でも書のコーナーで自然と足が止まるようになったんです。自分がこんなに書に食いつく日がくるなんてびっくりです。やっぱり知らないことはやってみるべきだと感じました。
相談者の方も、自分が皆目検討がつかない世界って何かしらあると思います。そういう世界にあえて飛び込んでみてください。ご縁も大事なので、たまたま近所のカルチャースクールに教室があるとか、友だちの紹介で体験してみるとか。何かしらで繋がったご縁で、未知のものをとりあえず色々と試してください。やってみて全然面白くなかったら辞めれば良いんです。そのうち、「面白いかもしれない」というものが見つかります。興味のあることは繋がっていくもので、私は書の先生から今はお茶の先生やお能の先生へと出会いが広がっています。
あとは、子育て関連のNPOやボランティア活動に参加してみるのもオススメです。子育ては社会全体でするもの。自分の子育てが落ち着いて時間と心に余裕があるのなら、いま大人の手を必要としている子どもたちに関わりを持つことも、やりがいがあることですよ。

自分時間の過ごし方が下手


(30代・金融業)

子どもが4歳と8歳の男の子で、仕事に育児に慌ただしい日々を過ごしています。「忙しい!」「自分の時間がほしい!」と毎日思っているのに、いざ自分時間を確保できたらできたで、うまく楽しめません。

元気でいるためにも、仕事のパフォーマンス向上のためにも、たまには1人でリラックスする時間は大切だと思っています。でも1人でいると「この時間を仕事や子どものためにあてたほうがよかったのでは…」などと考えてしまい罪悪感を感じます。いわゆる「休み方」が下手なタイプです。

小島さんは忙しい毎日の中で、プライベートを充実させるために、どんな工夫をしていますか?



小島さんの回答「人生は大変。それでも生きることは楽しいと子どもに伝えるチャンス」

親が楽しそうにしていることは、子どもにとってもすごく良い教育だと思います。親が子どもに伝えられる大切なメッセージって「色々大変なこともあるけど、なんだかんだ生きるのは面白い」ということではないでしょうか。

人生は思うようにならないことも色々あるので、親は人生の先輩として困っている姿を見せることも良いことだと思うんです。仕事が大変とか、夫婦って大変とか。大変なことに一生懸命取り組みながら、それでも生きるのは面白いという実感を親自身が持つ。そしてその姿を見せることは、子どもの「生きる力」をつけてあげることにつながると思います。

映画を見に行って楽しかったとか、お友達とお茶して楽しかったとか、エステ行って気持ちよかったとか。そういったことを子どもに話してあげるのも良いと思います。

私も息子から「親が楽しそうにしていると自分も楽しいし、安心する」と言われましたよ。

親が好きなことを楽しむ姿は、子どもの世界を広げることにもつながると思うんです。「お芝居見物は楽しい」という話は、演劇や舞台って面白いんだと、子どもに印象付けるでしょう。「何十年来の友だちと会って楽しかった」という話なら、友だちって素晴らしいものだということが、どんな物語よりもリアルに感じられる。結果として良い教育になるはずです。

「人生は楽しいものだ」と子どもに伝えているのだと考えれば、自分の時間を思い切り楽しむ際の罪悪感もなくなるのではないでしょうか。

【回答まとめ】

・親離れをし始めた子どもの手を、上手に放そう

・未知の世界を知ることこそ、面白い

・親が人生を楽しんでいる姿は、子どもの「生きる力」になる



(取材・執筆:菱山恵巳子)

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