共働き、家事育児、忙しい毎日… 少しの工夫で取り入れられる効果的な7つの休養方法とは?
女性が働き続けるための上手な休養方法を、『あなたを疲れから救う休養学』(東洋経済社)著者の医学博士・片野秀樹さんに伺う特別インタビュー。後編では、簡単だけど効果が高い休養方法について、具体的に教えていただきました。
★インタビュー前編はこちら
→「仕事が終わった時点をスタートと考える」朝から元気に活動するための、休養のポイント
片野秀樹さん
博士(医学)、日本リカバリー協会代表理事、株式会社ベネクス 執行役員
東海大学大学院医学研究科、東海大学健康科学部研究員、東海大学医学部研究員、日本体育大学体育学部研究員、特定国立研究開発法人理化学研究所客員研究員を経て、現在は一般財団法人博慈会老人病研究所客員研究員、一般社団法人日本未病総合研究所未病公認講師(休養学)も務める。編著書に『休養学基礎 疲労を防ぐ! 健康指導に活かす』(共編著、メディカ出版)、著書に『あなたを疲れから救う休養学』(東洋経済新報社)。
7タイプの休養を複合的にとる意識を
- ―根本的に疲労を回復させる、正しい休養について教えてください。
- 片野:2休養には「生理的休養」「心理的休養」「社会的休養」の3分類があり、さらに「休息タイプ」「運動タイプ」「栄養タイプ」「親交タイプ」「娯楽タイプ」「造形・想像タイプ」「転換タイプ」の7つのタイプがあります。
■生理的休養
休息タイプ:休憩をとる、仮眠する、ソファでゴロゴロする など
活動を一旦中止し、安静・リラックスすること。
運動タイプ:ウォーキング、ヨガ、ストレッチ、入浴 など
軽微な運動で、血流を促し老廃物の除去やリンパの流れを良くする
栄養タイプ:白湯を飲む、腹八分目、ファスティング、胃腸に優しい食事をする
疲れた消化器系を休ませる
■心理的休養
親交タイプ:雑談、ハグ、挨拶、森林浴 など
社会や人と交流、自然や動物と触れ合う
娯楽タイプ:音楽鑑賞、映画鑑賞、習い事、読書、推し活 など
趣味・嗜好を追求する
造形・想像タイプ:絵を描く、DIY、地図を見て空想する など
何かに集中したり思いをめぐらせたりする
■社会的休養
転換タイプ:着替える、掃除、買い物、旅行 など
外部環境をリセットする
例えば、会社で仕事の合間に同僚と雑談したり、近所の方と立ち話をしたりすることは、「親交タイプ」の休養です。このように、知らず知らずのうちに自然と行えている休養もあるかと思います。
この7タイプの休養を複合的にとることで、疲労回復効果がより高くなります。
例えば、ひと息つこうとスープを飲むとします。これは「栄養タイプ」の休養です。そのスープを自分自身でつくることで「造形・想像タイプ」が加わります。料理が趣味だった場合「娯楽タイプ」の休養でもありますよね。また、ご家族などと一緒につくれば「親交タイプ」の休養にもなります。さらに、そのスープを歩いて近所の公園まで持っていけば、「運動タイプ」「転換タイプ」も加わる。そしてベンチに座ることで「休息タイプ」も加わります。
このように、一つの行動でもちょっとした工夫次第で全ての休養タイプを組み合わせることができるのです。
- ―なるほど。ちなみに、アルコール摂取は休養に入るのでしょうか?
- 片野:アルコールを飲む場で楽しい時間を過ごすというのは、「親交タイプ」の休養にはなり得ます。ただし、体内でアルコールを分解するためにはエネルギーが必要なので、体にとってはストレスとなります。アルコールでストレスを発散しているのは、まさに疲労感を隠している状態。決して活動能力が高まっているわけではありません。過度な飲酒はせず、適度に楽しむ程度に留めるのが良いと思います。
仕事以外も忙しい共働き女性は、オフの棚卸から始めよう
- ―仕事でストレスを感じてドッと疲れた時、瞬間的にできる疲労回復法はありますか?
- 片野:そんな時は、仕事やストレスから一瞬自分を切り離す行動が大切です。例えば会社で隣の席の人と会話をするだけでも効果的。
また、その場で目を瞑って良いイメージをするだけでも立派な「造形・想像タイプ」の休養になり、ストレスから自分自身を切り離すことができます。良いイメージというのは、行ってみたい場所や、過去楽しかったこと、家族と大笑いした思い出など、なんでも大丈夫。これならいつでもどこでも、お金をかけずにできますよね。
こういったちょっとした休養を自分自身で積極的にとりにいく「攻めの休養」を取り入れることで、活力を高め、また良い状態で活動を再開することができるようになります。
- ―仕事・家事・育児に忙しい共働き女性が上手に休養をとる方法を教えてください。
- 片野:まずは「勤務間インターバル」ですべきことの棚卸から始めてください。勤務間インターバルとは、仕事が終わってから翌日の仕事をスタートするまでの時間のことです。EU加盟国では、1993年に勤務間インターバルを11時間以上確保することが法律で制定されています。
その勤務間インターバルの中には、通勤時間、食事の時間、睡眠時間、家事・育児の時間、一人の時間が含まれます。朝目覚めた時に活力が高い状態でいることを目的に棚卸すれば「いまの私には何がどれだけ必要なのか」「実はこれは必要ない」といったことが見えてくるはず。
勤務間インターバルに何をすべきかは、生活環境や体質等によって人それぞれで、パターンはありません。睡眠時間でさえ、人によって適切な時間は異なります。一人時間だって毎日数時間はほしいのか、1週間に1時間で良いのかは人によりますよね。自分なりの過ごし方をぜひ見つけることが大切です。
「オフファースト」で、高いパフォーマンスを出せるように
- ―気付くとずっと仕事をしてしまいがちなリモートワークでの注意点はありますか?
- 片野:いつでもどこでも仕事ができる時代だからこそ、仕事を上手に切り離しながら余白をつくり、休養と集中を繰り返してほしいですね。
90年代のエネルギードリンクのCMで「24時間戦えますか?」というキャッチコピーがありました。では当時、それだけ働いていたのかというと、実はそうでもない。当時はスマートフォンはおろか携帯電話もなく、PCも会社から1人1台支給されていない時代です。デジタル機器を持ち歩いていない分、移動時間や自宅で仕事をすることは不可能で、この余白を休養の時間にあてることができたのです。読書をしたり、コーヒーを飲んだりといったように。知らず知らずのうちにバランス良く休養をとることができた時代なのです。
現代はこのような働き方はなかなかできませんし、特にリモートワークではオンとオフがどうしても曖昧になりがち。仕事の合間にうまく休養の時間をとる術を身につけてください。
- ―最後に、Be myselfの読者にメッセージをお願いします。
- 片野:とにかく「オン至上主義」から「オフファースト」に切り替えてください。繰り返しになりますが、仕事が終わったところを起点に、翌日の仕事のためにいかに活力を高めるかの日内サイクルを考えていただきたいです。
さらに、1週間の予定を考える時も、土曜日を起点にすることをオススメします。月曜日を起点にしてしまうと、木曜日あたりで「あと2日頑張れば週末だ」というテンションになってくる。この状態で、週後半は良いパフォーマンスが出ているとは思えないですよね。
まず土曜・日曜が先にあると捉えれば、後の5日間のタスクをこなすために、土曜・日曜でどのような活力を高めるための行動をとるべきかという視点になるはずです。そうすれば、活力が高い状態で月曜日を迎えられて、高いパフォーマンスで効率的な仕事ができると思いますよ。