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マイキャリアストーリー

『“サポートがあってこその両立” 周りを頼ることで仕事も自分もラクになれた』
トヨタ自動車 UI商品開発部 志土地さん【後編】

誰しも迷うキャリアの決断。管理職として活躍する女性はいつ、何に悩み、どう決断してきたのか。キャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。

今回は前回に引き続き、トヨタ自動車株式会社 UI商品開発部でグループ長を務める志土地さんにお話を伺いました。

※所属・役割は取材時点のものとなります。

志土地(しどち)さんのイメージ画像

志土地(しどち)さん

トヨタ自動車株式会社 UI商品開発部 GM(グループ長)
2010年、技術職として新卒入社。以来、一貫してトヨタ新システム「パノラミックビューモニター」の開発に取り組む。2015年~2016年、2018年、2023年~2024年に産休・育休を取得。25年1月よりグループ長に就任

「一人で気負わずに一緒に考えていこう」、先輩の一言に肩の荷が下りた

トヨタ自動車での約15年のキャリアを通じて、周辺監視カメラシステムの機能改善に携わってきた志土地さん。プライベートでは、3児の母でもあり、これまで3回の産休・育休を取得しながら働き方の試行錯誤を重ねてきました。

現在、トヨタ自動車では、フレックスタイムや在宅勤務制度が完備され、子どもの習い事などで一時的に業務から離れられる「離業」(いわゆる中ぬけ)の仕組みも取り入れています。 ただ、志土地さんが1回目の産休・育休を取得した2015年当時は、まだまだ、制度が整っていなかったと当時を振り返ります。
「1人目のときは時短勤務で復帰したのですが、フレックスタイム制が適用されていなかったので時間の融通が利かない仕組みになっていました。保育園の送りが遅くなり、どうしても朝9時出社に間に合わない…という日もあって、『復帰したはいいけれどチームのためになっているのか』と自問することが多くありました。
さらに、復帰後すぐに2人目を妊娠し、つわりによる体調不良で仕事もままならない状態が続いてしまいました。周りからどう思われているんだろうと気になってばかりで、自分が目指す“働き方”がまったく見えなくなっていましたね」
時短勤務でうまくいかなかったからと、2回目の復帰後はフルタイム勤務を選択した志土地さん。業務時間が長くなって余計に大変そうに思えますが、出社時間の前倒しや後ろ倒しができる分、フルタイム勤務のほうが“柔軟な働き方”が実現しやすかったといいます。
「周辺監視カメラシステムの開発の仕事は楽しく、一緒に働くチームメンバーも大好きで、復職自体に迷いはありませんでした。でもだからこそ、『一方的に助けられるのではなく、周りから頼られる存在でありたい』という思いも強くて…。チームに貢献するための時間がなかなか取れないことにもどかしさを感じていました」
そんな考え方が変わるきっかけをくれたのは、志土地さんをよく知る先輩でした。
「余裕がまったくなくなっていた私に気付いてくれ、話をじっくりと聞いてくれたんです。感情を吐き出した私に先輩は、『そんなに気負わなくてもいいんじゃないかな』と言ってくれました。
『時間がない中で頑張っているのはみんな知っているのだから、どうすればうまく回っていくか周りのみんなと一緒に考えていけばいい』と。

当時は、周囲と“一緒に考えていく”という発想にすら思い至っていませんでした。でも、先輩の言葉を聞いて、それまで抱えていた荷物をスッと降ろせたような軽やかな気持ちになりました」
それまでは、「自分の業務は自分一人でやり切らなくてはいけない」という思いが常にあったそう。先輩との話を経て、次第に周りに頼れるようになっていったといいます。
「子どもの急な体調変化で休まざるを得ないことは多々あります。フルタイム復帰の直後は、次の日に残業してでもやり切らなくては…と思い込み、“自分一人で頑張る”以外の選択肢を持っていませんでした。でも、『こういう状況なので、この部分だけお願いできませんか』と周りに相談できるようになり、チームとしての業務進行はよりスムーズになったと思っています」
23年に第三子を出産した際には、「周りのサポートがなければ両立は無理!」といい意味で開き直れるようになっていました。子どものイベントの数も3倍に増えるため、「今は周りの皆さんに全面的に頼りながら生活している」と笑います。
「働く母の姿を見ながら育ってきた上の子2人は、いまや小学生。自分でできることは自分でやろう、という自立心が芽生えているのが、頼もしい成長です」

目指すのは、「負担を察知してサポートできる人」

25年1月から、グループ長として7人のメンバーを束ねている志土地さん。長く開発に携わる中で、“人とのつながり”の大切さを感じ、いずれは自分のグループを持ってメンバー育成に携わりたいと思うようになったと話します。
「メンバーのみんなと対話をするときには、現場のことをしっかりと理解した状態でいようと思っています。例えば、メンバーが展示会などのイベントに出なくてはいけないとき、開発現場の業務は滞りがちです。イベントに行っている間に何かしら手伝えることはないか、負担がかかりすぎていないかなどを常に気にしながら、スケジュール管理などにも目を配ります」
その思いの背景には、「私がしんどかったときにも、気づいてくれた人、さりげなくフォローしてくれた人が必ずいた」という感謝の気持ちがあるといいます。
「とくに妊娠期間はつわりが酷く、かなりつらかったのですが、何も事情を伝えていないのに手を貸してくれる人たちに囲まれて、精神面でも本当に救われました。『こんな風に周りを見てサポートできる人になりたい』と抱いた憧れが、マネジャーとしての指針の一つになっています」
現在は、子どもたちの習い事の送り迎えで、夕方に“離業”することも多いといいます。志土地さん自身が席を外す時間があったり、在宅勤務中のメンバーが多かったりと、常に状況を把握するのは簡単ではありませんが、だからこそ「こまめな声掛け」を大事にしています。
「気になる様子が見えれば、休み明けに電話で話を聞いたりしています。また、メンバーには、『離業中でも、困ったことが起きたらいつでも電話していいからね』と声をかけています。
そうしたコミュニケーションの積み重ねは、開発にも生きてくるはずです。パノラミックビューモニターの新たな機能を世に出していくためにも、アイデアを出し合えるチームワークが大切。クルマの安全性を高める機能開発を、今のメンバーみんなと一緒に実現していきたいです」
グループ長になって半年が経ち、メンバーからプライベートのことや育休取得についての相談を受けることも増えているといいます。男性社員の育休取得が当たり前になってきている昨今、「育休中にどう過ごせば、妻が一番ラクになると思いますか」などと聞かれることも多いのだそう。「10年前では考えられなかった社会の変化を感じる」と笑顔で話す志土地さん。キャリアに悩む若手メンバーも多い中、必ず伝えているのは、「いろいろな選択肢がある」ということ。読者の皆さんへのメッセージと重ねて、最後にこんな言葉をいただきました。
「私は、たまたま3人子どもがいて、仕事と育児・家事を両立させて技術職を続ける道を選びました。でも、もっと家庭を優先させる働き方もあれば、仕事に全力を注ぐ働き方もあったりと、働き方の選択肢はたくさんあります。また、選んだ働き方を実現させるために、どのような業種や職種を選ぶか、どのように周囲からサポートを得るかについても正解はありません。
だからこそ、ロールモデルはたくさんあっていいと思います。いろいろな生き方、働き方があるんだと知った上で、一人ひとりが自分の道を選んでいってほしいです」

「前編記事」


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取材・執筆:田中 瑠子

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