『踏み出すことがすべての起点』
STELAQ代表取締役社長 三宅香代子さん【後編】
誰しも迷うキャリアの決断。管理職として活躍する女性はいつ、何に悩み、どう決断してきたのか。キャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。
今回は前回に引き続き、株式会社STELAQ代表取締役社長の三宅香代子さんにお話を伺いました。

三宅 香代子(みやけ かよこ)さん
株式会社STELAQ代表取締役社長
自動車部品メーカーにてソフトウェア開発に従事。その後ドイツの認証機関において、自動車の機能安全に関する監査やコンサルティング業務を担当。2021年にSOLIZE株式会社(現SOLIZE Holdings株式会社)に入社後、ソフトウェアエンジニアリング事業を立ち上げ、2024年8月に代表取締役社長に就任。
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事業立ち上げや会社づくりは一つの夢だった

- ドイツの認証機関での経験を経て、2021年にSOLIZEに入社した三宅さん。そこで、品質保証サービスや国際規格への適合コンサルティング事業を新たに立ち上げ、その事業の拡大によって、STELAQ設立につながっていきました。
SOLIZEへの入社を決めたのは、代表・宮藤康聡さんから、「資金と人材は提供できますので、やりたいことがあるならSOLIZEで挑戦しませんか」と言われたからだったと話します。 - 「何も決まっていない中で、事業を作っていくことを任せてくれる姿勢がうれしかったし、何よりも面白そうだった。キャリアを重ねる中で、いずれ自分で事業を立ち上げ、会社を作りたいという思いが強くなっていたので、私にとってはベストなタイミングでした」
- 実はそれまでに2社、スタートアップに在籍したことがあるという三宅さん。事業づくりや組織づくりを実践的に学べた一方で、「事業拡大へのチャレンジ継続には、安定した財政基盤があることが重要である」と痛感したといいます。
- 「 “やりたいことやアイデアがあってもお金や人的リソースがない”というスタートアップならではの経験をしました。だからこそ、順調に事業成長を続けていたSOLIZEがいかに恵まれた環境かを実感できたのだと思います。財政面で大きな不安を抱えずに自由にチャレンジができるだなんて、なんて恵まれたチャンスだろうと思いました」
- そうして立ち上げたのが、自動車や医療、金融、官公庁など、“社会インフラとして高いソフトウェア品質が求められる業界”に特化して、トータルソリューションを提供していく現在の事業でした。
- 「ソフトウェア開発、コンサルティング、機能安全に関する監査など、さまざまなドメインを持つ企業に所属してきて、『すべて1社で提供できればいいのに…』と思うことがよくありました。認証機関にいたときは、ここで開発ができればいいのにと思いましたし、コンサルティングを手掛けていたときは、同時にテスト検証ができればお客様のニーズを満たせるのにというもどかしさがありました。
特に、命を預かる自動車業界や、お金を預かる金融機関では、小さなバグも許されません。それらの領域で開発から検証までトータルでソリューションを提供する事業をつくれれば、必ずニーズがあるし、私のこれまでの経験も生かせるだろうと考えました」
知らない世界を知っていく、だから事業づくりは面白い

- 事業立ち上げ当時は、いずれ自分が会社のトップになるとは思ってもいなかったと語る三宅さん。それまでにも、小さなチームのマネジメントや組織づくりは経験してきましたが、STELAQの従業員数はいまや200人超。これほど大きな組織を束ねた経験はないため、「チームづくりが得意な人を入れて、どんどん任せている」と話します。
- 「もともと、アイデアを形にしていく“事業の立ち上げ”は得意だったのですが、組織を大きくしていく仕事は未知の領域でした。また、外資系組織にいた時間が長かったこともあり、チームで動くというより個人商店の集まり、という働き方に慣れていました。
だから、自分がマネジメントに入っていくよりも、マネジメント経験の豊富な方を採用していくほうがうまくいくと思いましたし、これから組織を大きくしていく上でも、一緒に働く仲間をどれだけ信頼して任せられるかが大事だと思っています」
- 経営者として日々、大小さまざまな決断に迫られる中、大事にしているのは「仮に、自分のお金を投資していたとしたら、どう判断するだろうか」という視点だといいます。
- 「STELAQは幸運にも、東証スタンダード上場のSOLIZEのグループ会社として、安定した財務基盤に支えられています。うまくいかない事業を数年続けていても、経営にとって致命傷にはならないかもしれません。それは非常に恵まれた環境ですが、一方で、経営判断に甘えが出るという怖さもあります。いつも意識しているのは、もし自分のお金を投資して立ち上げたならどうするか、ということ。自分のお金ならスパッと手を引くだろう、と思うのなら、すぐに辞めるようにしています。個人的に株式投資を長くやってきたこともあり、投資金額に見合わない事業にはお金を出したくない、という感覚が根付いているのかもしれません」
- STELAQは設立時から「10年で売上100億円規模の会社になる」ことを目標にしてきました。経験豊富な幹部メンバーが揃ってきた今、三宅さんは、「事業拡大と組織づくりはある程度任せて、自分はまた新しい事業を作っていきたい」とこれからの挑戦に目を向けています。
- 「事業づくりが好きなのは、自分がまだ知らないことを知っていくのが楽しいからです。自分が今いる場所から出ていかないと、何が“知らないこと”なのかは見えてこない。そこで、社外の経営者が集まるコミュニティに行ってみたり、新たに財務面の勉強を始めたりと、普段仕事をしていては出会えないような人がいる場所に、積極的に足を運ぶようにしています。『面白そうだと思えるものはないかな』と常にアンテナを張り続けることが大事ですね」
- 点と点だった経験やスキルを線でつなぎ、新たな事業づくりから会社の設立、代表取締役社長への就任とキャリアを広げてきた三宅さん。どんな意思決定の積み重ねが、今の三宅さんにつながっているのでしょう。読者の皆さんに伝えたいメッセージを聞くと、こんな答えが返ってきました。
- 「やってみてダメだったり嫌だったりしたら、一度立ち止まって、方向修正して、また前に進めば良いと思っています。行動に移さないまま、やればよかったと後悔するのが一番もったいない。やらないまま、『10年前にやっておいたらよかった』、『あのときやっていたら今どうなっていただろう』と考えても、過ぎてしまった時間は元に戻りません。
もちろん、50代でも60代でも、いつからでも動くことはできます。でも今目の前に、挑戦できる環境やチャンスがあるのなら、迷わず踏み出してほしい。『やってみたらそんなに難しくなかった』と感じることって、実はたくさんあると思います」
→「前編記事」
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写真:MIKAGE
取材・執筆:田中 瑠子