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マイキャリアストーリー

『振り返ってつなげることで、自分の道ができていった』
note・人事 中西麻子さん

女性なら誰しも迷うキャリアの決断。先輩たちはいつ、何に悩み、どう決断してきたの? 現役で活躍し続ける女性たちに、これまでのキャリアの分岐点と、決断できた理由を語っていただきます。

第7回は、note株式会社 人事マネージャーの中西麻子さんにインタビュー。人と組織のあり方を模索し続ける中、見えてきた仕事観を伺いました。

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中西 麻子さん

note株式会社 人事マネージャー

2012年、新卒としてヤフー株式会社に入社し、人事部門にてHRBPや人事企画業務に携わる。2019年5月、株式会社エブリーに入社し、マネージャーとして人事制度の企画・運用およびHRBP業務、採用業務に従事。2020年7月にnote株式会社にジョインし、2021年2月より人事チームのマネージャーとして、人事領域全般を担当。

一人でできないことも、チームならできる

― 大学卒業後から、一貫して人事領域に携わってきた中西さん。現在は、note株式会社の人事マネージャーとしてメンバーを束ねながら、組織拡大に向けたあらゆる人事施策に携わります。採用、制度設計を通した組織開発のほか、HRBPとして事業部と連携し、課題解決に向かう体制づくりも進めています。 「人に関わる仕事がしたい」という漠然とした思いが、人事という仕事選びにつながってきたという中西さん。人への関心の原点は、子どもの頃から大好きだったサッカーにあるといいます。
「“メンバーそれぞれにポジションがあり、チームプレーで勝つ”ところがすごく好きだったんです。一人ではできなくても、それぞれの強みを生かせば一丸となってゴールを目指すことができる。その楽しさや喜びに夢中になりました。今も“組織の力”を信じられるのは、サッカー経験の土台があるからだと思っています」
― “人間の面白さ”への関心から、大学では心理学を専攻。フットサルのサークルを立ち上げるなど組織づくりを経験する中で、人と組織に関わる仕事として、人事を自然に希望するようになったそうです。 ただ、当時は職種別採用がほとんどなかった上、就活の本格化と同時に東日本大震災が発生。企業が採用活動を軒並みストップさせる中で出会ったのが、中西さんがファーストキャリアとして選んだヤフーでした。
「不思議な感覚なのですが、選考の段階から『私はここで働くことになるだろうな』という具体的なイメージがありました。それは、ヤフーの社員の方とは、誰とでも対話ができたからなのだと思います。ほかの企業の面談や面接では、話し下手な自分が出てしまって、“偉い社会人”を相手に萎縮してばかりでした。でも、ヤフーでは部長ポジションの方にも自然に意見を言うことができたんです。仕事でも、こんな風にディスカッションができるだろうと感じていました」

人事は手段。ゴールに近づくために何ができるかを考えるようになった

―入社後は経営企画職を経て、入社1年目のうちに希望していた人事部に配属されることに。社員の勤怠管理や給与計算をはじめとする労務業務を担当したのち、2年目になると社内で新たにHRBPの機能を担うチームが立ち上がりました。知識も経験もゼロベースの中「これこそ私が人事としてやりたいことなのでは?!」と思い手を挙げ、労務とHRBPの兼務が始まりました。
「HRBPには、各部門のトップと1on1で相対し、それぞれの組織が抱える課題を解決するというミッションがありました。まさにやりたいことではありましたが、当時は経験もスキルもなく、全社の方針として決まったことを部門トップに伝えるだけで精一杯でした。今思えば、誰がやっても変わらない“伝書鳩”でしたね」
― しかし、その仕事観が大きく変わる出来事が2年目の最後に訪れます。
「ある役員の方から思いっきり怒られ、号泣して役員室を飛び出すという、私の中で“大事件”があったんです。
その背景には、全社の採用方針と部門の採用方針の間の大きなズレがありました。でも私はただ、『来年度以降はこの方針になったのでよろしくお願いします』とだけ伝えていました。ズレを解決するために、どう動くべきなのかを深く考えられていないことがすぐに伝わったのでしょう。役員の方が『我々の部門がやりたいことに何もつながらない』と怒るのも当然でした。
組織が成果を出すために課題解決をするというミッションに対して、私には何の存在価値もなかった。そのことに、大きなショックを受けました」
― その経験を機に、自分だから提供できる価値は何か、を常に考えるようになったという中西さん。実現の難しい課題解決であったとしても、事業成長につなげるには何をどう転換すればいいのか、「ネガティブじゃなくポジティブ」を意識し始めたといいます。
「できない理由ではなく、できる理由を探すこと。なんでできないんだろうではなく、何があればできるんだろうと考えるようになりました。
役職者と接する中でも、御用聞きになるのではなく、『それは本当に、組織のためにやるべきでしょうか』と怖がらずに意見するようになりました。20代の頃は、偉い立場の人は答えが分かっていると思いがちです。でも、誰にでも課題はあります。人事だからフラットな立場で提供できる情報や意見があり、それが価値なのだと少しずつ自信が持てるようになりました」
ー ヤフーで7年間の人事経験を経て感じたのは、「人事は手段でしかない」という思いだと中西さんは話します。
「人事施策は手段であり、人事という存在自体も手段でしかないと思っています。つい、手段が目的化して『施策を回すこと』に一生懸命になりがちですが、大事なのは手段をいかに活用するかです。本当に組織の成果につながるのか、今やるべきことなのかなど、目的を常に意識した上で対話をすることが大切。そんな思考のクセづけを、ヤフーにはたくさん教えていただきました」

ロジックとパッションを持って、組織を率いる仲間の“バディ”になりたい

― その後、より小さな会社規模で組織全体を見るポジションにつきたいと、ベンチャーへの転職を決めた中西さん。動画メディア事業を手掛けるエブリーでの人事担当を経て、2020年7月よりnoteに入社しました。
「noteに惹かれたのは、CEOの加藤(貞顕)を含め取締役との面接で、事業への想いの強さを感じたからでした。
前職のベンチャーは、数字ドリブンなカルチャーで、事業成長の観点で学ぶものはたくさんありました。でも小規模の会社だからこそ、会社のミッションを自分事として捉えられるかどうかがすごく大事だと気づかされたんです。
noteは、『だれもが創作をはじめ、続けられるようにする』というミッションが明確で、とても共感できました。加えて、代表の加藤は、入社するか分からない選考段階の私に対して、『僕はこれから会社をこうしていきたいんだ!』とものすごく熱く想いを語ってくれたんです。『この会社の事業成長に自分も貢献したい』と純粋に思えました」
― 中西さんが入社してから、noteの従業員数は2倍、3倍に急増。組織規模も拡大し、2022年12月には上場も果たしています。急な環境変化に伴い、カルチャー浸透の難しさや、リモートワークの働き方と社内コミュニケーションの活性化との両立など、さまざまな課題にぶつかっているといいます。 そんな中でも、「人事の仕事は、終わりなき旅だからこそ面白い」と話す中西さん。ミッションドリブンで成長してきたnoteを、上場企業としていかに社会から信頼される組織にしていくか。新たな“第二章”のステージが始まっているといいます。
「ミッションに共感して入社したメンバー一人ひとりの成果を、きちんと事業の成長につなげ、会社全体の成果につなげる仕組みづくりが重要です。私自身も、たとえば人事以外の財務的な知識をはじめとする周辺領域の知見も身につけなければ、会社の状況を自分事として把握できなくなってしまう。そんな課題感をひしひしと感じているので、専門性を少しずつ横に広げていきたいと思っています」
ー 正解のない人事の仕事を続けていく上で、判断に迷うとき、中西さんは何を大事にしているのでしょう。
「大事にしているのは、ロジックとパッション。そしてそれを、組織の成果を出すための手段として活用することです。
人事は、経営に提言することも多い仕事です。きちんとロジックを立てて、『目的を果たすためにこの手段が必要』と説明できなければ人を動かすことはできません。
一方で、こうしたいというパッションも欠かせません。人事施策一つとっても、現場のマネージャーに意見を求めれば一人ひとり違う答えが返ってきます。人事としての想いがなければ、決断できないんです。

人事として目指すのは、組織を率いる人と一緒にゴールに向かう“バディ”になること。ヤフー時代からずっと、とにかく現場に足を運んで関係を築いて、価値を提供し合う“バディ”になりたいと動いてきました。
ロジックとパッションの両方をバランスよく持って、自分自身が“目的”にならないように“手段”に徹することが、私の理想の人事像かもしれません」

経験をどうつなげるかは、あとから考えればいい

―人と組織にかかわりたいという明確な思いが、キャリアにつながっている中西さん。軸が1本通っているかのような仕事観ですが、「軸はあってもなくても、いいんじゃないかな」と笑顔を見せます。
「軸を持つことが正解でもない、とよく思うんです。
キャリアは結果論でつながることがたくさんありますよね。『何をやったらいいのか分からない』『強みが分からない』と悩んでいた友人たちが、周りから求められる仕事に全力で向き合っていたら幅が広がって、今では『これが自分だったのかも!』と話しています。
キャリアの正解を見つけようとするよりも、歩んできたキャリアを“自分で正解にする”ことが大事なんだなと思っています。

私もこれから、興味のあることに挑戦したり、家庭に寄りそう時間を増やしたりなど、時には寄り道のように思える選択をするかもしれません。でも、どんな経験にも価値があるし、学べることが必ずあるはず。これからの自分にどう生かして、どうつなげるかは、あとから考えてもいいんじゃないかなと思っています」








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写真:龍ノ口 弘陽
取材・執筆:田中 瑠子

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